「目的意識を持つ」「続けられないことはしない」「無理な目標を立てない」「最初からがんばりすぎない」「体重よりもサイズに注目」「焦らずじっくり」「運動していることを免罪符にしない」「1分でも、毎日運動をする」「ストレスをためない」「腹八分目」――。
これらは、本書『「1日5分」で 下腹だけ、凹ませる!』(宝島社)が掲げる下腹を凹ませるための十か条。「内臓を支える筋肉を整える」ことで、「下腹ぽっこり」をはじめ、猫背、肩こり、腰痛、便秘まで解消できるという。どれも当てはまるという人も多いだろう。では、どの筋肉をどのように鍛えるのが正解なのだろうか?
著者の岡部正さんは医学博士。慶應義塾大学医学部卒業。カナダ・カルガリー大学留学。亀田総合病院副院長を務めた後、オーダーメイド医療を理想に、東京・銀座に岡部クリニックを設立。専門医として、生活習慣病の予防と治療に長年携わっている。日本病態栄養学会評議員、日本糖尿病学会認定専門医・指導医、日本肥満学会会員。著書に『自力でコレステロールと中性脂肪を下げる30の法則』(宝島社)などがある。
本書の目次は以下のとおり。
PART1 太っていないのに下腹だけがぽっこりしてしまうのはなぜ?
PART2 ストレッチと筋トレで下腹だけ、凹ませる!
PART3 食生活を改善して一生「ぽっこり」しない
PART4 「ぽっこり」しない生活習慣Q&A
「ぽっこり」と聞いて真っ先に思い浮かぶのが、脂肪の存在。しかし、著者は「『下腹ぽっこり』の正体は、皮下脂肪ではありません!」と明言している。
「『下腹ぽっこり』の原因は脂肪ではなく、内臓を支えているインナーマッスルの筋力の低下であることがほとんどです。下腹ぽっこりを改善したいのであれば、今の(筋トレ)ブームに乗って、せっせと筋肉を鍛えるしかありません」
PART1では、最初に体のしくみを解説している。筋肉は、内臓がずり落ちないように支える役割を持つ。腹部と背中、骨盤の底にあるインナーマッスルで、ガードルをはいているのと同じように立体的に内臓を包み込み、連動して支えているという。
「下腹ぽっこり」は、このガードルの役割を果たす筋肉が衰えたことで内臓を支えられなくなり、重力で下がって前にぽっこり内臓が出てきた状態。「下腹ぽっこり」の解消には、食事制限でも補正下着でもなく、内臓を支える5つの筋肉(横隔膜、多裂筋、腹横筋、腸腰筋、骨盤底筋群)をコツコツ鍛えるしかないという。
意外だったのが、「下腹ぽっこり」に悩む人は手足が細い痩せ型が多いこと。肥満やメタボリックシンドロームで下腹だけがぽっこり出ている人は、まず見かけないという。脂肪は一つの場所に偏ってボコッとつくことはなく、下腹に脂肪がついている人はほかのパーツも太っている。「そういう場合は『下腹ぽっこり』ではなく、お腹全体が『でっぷり』となります」。
「下腹ぽっこり」の原因のほとんどは筋肉の衰えによるものとした上で、さらに分析していくと、年齢や生活習慣により4つのタイプに分けることができるという。
■タイプ1 下がった内臓によるぽっこり
内臓を支える筋肉が衰え、ぽっこり。手足は細いのに、下腹だけ目立つことも。中年女性より若い世代に当てはまる。
■タイプ2 姿勢の悪さや骨盤のゆがみによるぽっこり
猫背の姿勢がお腹を圧迫し、ぽっこり。
■タイプ3 便秘やお腹にたまったガスによるぽっこり
便が腸に詰まり、ぽっこり。
■タイプ4 内臓脂肪によるぽっこり
体全体に脂肪がつき、ぽっこり。閉経後の女性に多い。
チェックリストを参考に自分がどのタイプかを知り、タイプ別のトレーニングメニューへと進む。PART2では、「1日5分! 下腹ぽっこり解消エクササイズ」「姿勢矯正ストレッチ」「快腸&内臓脂肪撃退トレーニング」を多数のイラストとともに解説している。
「下腹ぽっこり」になる人は運動習慣がない場合が多く、著者は患者にこう指導している。まず「座っている時間を短くしましょう」「少しずつ動きましょう」から始めて、「1日最低でも今より10分は動くように」。その10分は1日のトータルでもいいし、何をやってもいいから、まずは2週間続けること。「2週間続いたことは習慣になります」としている。
年齢とともに下腹がぽっこり(でっぷり)してきてコンプレックスを感じてはいるものの、具体的に何かしているわけではない、という人も多いのではないだろうか。しかし、ヒヤッとすることが書かれていた。
「医師として食事改善をお勧めする理由は、スタイルをよくするためだけではありません。医学的に見ると内臓脂肪が増えた『内臓肥満』の状態というのは実に深刻です」
内臓脂肪から分泌される「アディポネクチン」は「長寿ホルモン」と呼ばれ、糖尿病やある種のがんの予防、動脈硬化の改善、血圧を下げる作用など、さまざまな働きがあるという。しかし、太って内臓脂肪が増えるほどその分泌量は減り、逆に悪玉物質が分泌される。その結果、命の危険があるものも含め、病気にかかるリスクが高まるという。
「ウエストの太さと内臓脂肪の量は比例すると言われているので、ウエストが太くなってきたな......と思ったら、内臓肥満に注意してください」
最後に、著者がダイエット指導をする前に患者に書いてもらう「食事日記」にふれておこう。記入する項目がユニークだ。「時刻」「献立」「量の目安」だけでなく、「どこで何をしながら」「どんな気分で」「空腹感」まである。最後の3項目は、自分がどんなときに食べてしまうかの傾向がわかり、自己分析になるという。
本書を読むと、実際に著者のクリニックを受診して指導を受けた気分になる。医学的な解説を読み、もはや美意識のためでなく、健康、命のために運動したり食生活を見直したりする必要があると知った。危機意識が芽生え、自分の体と向き合う本気度がアップする一冊。
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