子どもができない原因、男性側にある割合は何%かご存知だろうか?
「妊活」関連のネット記事、書籍、雑誌は「女性向け」が多い。実際に妊娠、出産する女性は当事者意識が芽生えやすく、一方、女性を見守る立場の男性はなかなか当事者意識を持ちづらい。妊娠、出産に対する夫婦の立ち位置の違いが、メディアの取り上げ方に表れているのだろう。
しかし「妊活」は女性一人が頑張ってどうにかするものではなく、夫婦で取り組むもの。そこでツイッターで14万人が共感した「夫婦の妊活バイブル」を書籍化したのが、本書『やさしく正しい妊活大事典』(プレジデント社)だ。
著者の吉川雄司さんは、株式会社ヘルスアンドライツ代表取締役。大阪大学卒業後、P&G、ワンキャリアを経て起業。監修者の月花瑶子さんは、産婦人科専門医。東京・新宿にある不妊治療専門クリニック杉山産婦人科に勤務。ヘルスケア企業にて医療監修のチーフアドバイザーを務め、講演なども行っている。
吉川さんは、妊活や不妊治療に取り組む人へのツイッターでの情報発信、イベント開催、不妊治療の記録を管理できるアプリの開発・運営をしている。その中で女性からよく聞くのは「夫に妊活のことを理解してほしい」「夫婦二人で一緒に妊活に取り組みたい」という声。そこで、男性が知っておくべき最低限の「妊活知識」をまとめたいと考えたという。
本書の特徴は大きく3つある。
・女性だけではなく、男性も理解しておくべき妊娠のメカニズムから、体外受精、パートナーのメンタルケア、不妊治療にかかるお金の話までを網羅した点。
・データはすべてエビデンスとなる研究論文や調査元の参照をつけ「怪しさ」を排除した点。感情論ではなく、科学的に「妊活」を進めるために必要最低限の内容を記載している。
・主人公のサラリーマン「せいじ」と産婦人科専門医「きょうこ先生」の対話をとおして学ぶことができる点。顔文字、図、グラフも多く、見やすさ、読みやすさに配慮している。
なお、本書は「日本が『子どもを授かる喜び』で溢れるように書籍を広めたい!」と呼びかけ、クラウドファンディングにより資金を集めつくられたという。
本書を読み進める前に、妊活における「三つの現実」を伝えている。
・現実1 子作りの正しい方法を知らずに、僕たちは大人になっている
学校の授業で習ったのは「避妊はとても大切」ということ。「避妊をやめても、すぐに子どもができるわけではない」とは、学校の先生は教えてくれなかった。
・現実2 子どもを授かりたくても、なかなか授かれない
日本で子どもができずに悩んだことがある夫婦は3組に1組。不妊治療をしたことがある夫婦は5.5組に1組。年間出生数が約95万人にまで減少しているなか、「体外受精」で生まれてくる子どもは近年では5万人超、18人に1人にまで増えている。
・現実3 妊娠できない原因の約半分は男性にもある
「不妊症=女性のカラダの問題」と思われがちだが、実は不妊に悩む夫婦の48%は男性にも原因があるとされている。
「不妊症」の定義は、夫婦で子作りをはじめて1年経っても妊娠しない状態。実際には、不妊を疑った際に「まずは女性だけが検査」となっている夫婦が少なくないという。これでは「原因特定のための検査をちゃんとしたとは言えない状態」ということになる。
こうした現状をふまえて、本書は男性の「精子」の健康についても解説し、妊活を「夫婦の問題」として向き合えるようにしたい、という著者の強い想いが詰まっている。
本書は「第1章 妊活の基礎知識」「第2章 妊活をはじめる」「第3章 不妊治療に取り組む」「第4章 不妊治療のお金とメンタルケア」からなる。4章をとおして計31のクエッションを投げかけ、1つのクエッションごとに「せいじ」と「きょうこ先生」の対話をとおして答えを解説し、最後にポイントをまとめている。
妊娠、出産への道のりは夫婦によって十人十色。「不妊」とひと言で言っても、原因や希望する治療方法によってとるべきアクションは異なる。「いま必要な情報」は、読者の方が個々に本書の該当するページを開いていただければと思う。
ここでは、印象的だった文章を引用したい。
「いまも、FacebookやInstagramを見れば、誰かが結婚式を挙げ、妊娠し、出産していて、みんなの『いいね』が飛び交っている......でもその『妊娠』や『出産』の背景にある『夫婦の努力』はSNSではわかりません」
「不妊治療や養子縁組に対しては、偏見とまではいかなくても、どこか『自分とは関係のない話』として距離を感じる方が多いのではないでしょうか。ただ、それは当事者たちがオープンに語らない、語れないという状況があるだけで、本当は決して『ごく稀なこと』ではないと知っておいてほしいと思います」
結婚すれば妊娠、出産する、第一子が生まれて少し経てば第二子を妊娠する......。こうした考え方がまだ一般的なのだろう。当たり前のように「子どもは?」「二人目は?」と聞かれたことがある。しかし、誰もがすぐに授かるわけではない。親しい友人、親にもなかなか言えない。
本書は、夫婦が共通の知識を得て、二人のこれからを一緒に考えるきっかけになる頼もしい存在だ。いま抱えている心理的負担を軽くしてくれるだろう。ぜひ「夫婦の妊活バイブル」として夫婦で共有していただければと思う。
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