松浦ゆかさんの本書『望む人生に組み替える「未来設定ノート」――脳内GPSで"夢との距離"を把握するだけ』（大和出版）のタイトルを見て、サッと手に取った。いい年齢して自分探し......という気もするが、日々を無為に過ごさないためにも、1年のスタート地点に「未来」を「設定」することに意味があると思った。
こうした類の本は、大きく分けて2つのタイプがある。1つは、心理学や脳科学の専門家が理論的に解説したもの。もう1つは、専門家ではない著者が実体験から導き出した法則を書いたもの。本書は後者のタイプ。正直な感想として、専門家が書いたという安心感、信憑性、説得力には劣る。
しかし、松浦さんがどん底から成功を掴み取った実体験は、ある意味で理論以上の説得力があった。自分も松浦さんのように0から積み上げていけるかもしれないと、読者は希望を抱くことができる。
では、松浦ゆかさんとは一体どんな人物なのか？ 肩書は、ライフスタイルコーディネーター。株式会社ecleve International代表取締役。高校卒業後、単身渡英。現地で大学進学を志すが、挫折して帰国。就職難によりフリーターに。アルバイトをしながらプロのミュージシャンを目指すが、活動費がかさみ借金を抱える。木造四畳半のワンルームで苦しい日々を過ごす。
24歳で最愛の祖父の死と東日本大震災を経験し、「自分が人生で本当に叶えたいことはなにか」を意識しはじめ、25歳で起業を決意。出張形式の美容サロンをオープンし、1年で月収100万円超え。この頃から心理学、脳科学を独学で学びつつ、目標や理想の姿をノートに書き始める。
27歳でエステサロンをオープン。ノートの作り方を改良しながら、心の奥のメカニズムを分析。その手法を2016年に公開すると、講座はたちまち人気となり、現在は年収3000万円を突破。夢の叶え方、目標達成の方法、自分らしく生きていく方法、才能を生かした稼ぎ方などをセミナー・講座で伝えている。
本書は以下の3章からなる。
「第1章 『未来設定』で望む人生を手に入れよう」
「第2章 『現在地把握』で脳内GPSのスイッチをオンにする」
「第3章 超加速して夢へと進めるヒミツのテクニック」
本書によると、夢を叶えること・目標を設定することは、スマホ内のマップ（GoogleマップのようなGPSを活用したもの）に目的地を入力することと同義という。
しかし、この目的地の設定＝「未来設定」の仕方を間違えていることが多い。「未来設定」には、脳の仕組みを活用し、脳に行きたい未来を正確にインプットする必要がある。同じく、住所をきちんと入力しても、「現在地把握」ができていないと正確なルートが表示されず、目的地にたどりつけない。
そこで本書は、松浦さんの試行錯誤の経験と多くの書籍・論文から研究し導き出した結果から「夢の実現をさまたげる原因を打破し、達成するために必要な2つの方法」を解説している。
1 夢への行動を阻む「記憶」を洗い出し、叶えたい未来への記憶へと組み替える
2 叶えたい夢を決め、その夢との距離を把握する
この2つを行うのが「未来設定ノート」というわけだ。ここでは本書の54項目から厳選して、この時期に実践したい「先取り日記」を紹介しよう。
「先取り日記」とは、夢や目標がまるで叶ったかのように書くもの。叶った場面を日記として書くことで、脳内でイメージが繰り広げられ、具体化されて輪郭がはっきりしてくるという。
「いつ（日／月／年）、どこで、誰と、何をしていて、どんなことがあって、あなたはその時どんな気持ちなのかを、五感を意識して書くこと」
「五感と感情をリアルにイメージすると、脳はますます夢を現実だと錯覚する」
頭の中で具体化したイメージは、脳から体へ実際に指示が送られることがわかっているという。年始に必ず、松浦さんはその年末の「先取り日記」を詳細に書くそうだ。
本書で松浦さんは、ここにたどり着くまでにどんなことをノートに書き、どんな考え方で数々の局面を乗り越えてきたのか、ざっくばらんな文章で綴っている。20代前半までのずいぶんな迷走ぶりからわずか10年ほどで、大成功を収めた松浦さん。スマートにそつなく生きてきたというより、一個人が迷走、奮闘して0から積み上げて生きてきた感じが、読者に親しみやすさを与える。
年始にどんな意識でどんな行動をとるかが、この1年の自分の変化に結びつくだろう。
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