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独立、離婚で叩かれた小柳ルミ子さんが真意を語った!

もう68歳と思うのか、まだ68歳と考えるのか

 小柳ルミ子さんが芸能生活50周年の記念に書いたのが、本書『もう68歳と思うのか、まだ68歳と考えるのか』(徳間書店)だ。最近は趣味の域を超えた熱狂的なサッカーファンとしても知られる小柳さん。これまでの芸能活動とプライベートを初めて語った。タレント本の枠に止まらない芸能史の証言としても貴重な内容になっている。

 また、68歳という年齢を隠さず、独身の美淑女として、大人の恋愛のあり方やチャーミングな高齢女子になるポイントなど、同年代女性の生きるヒントにもなるメッセージを発している。

宝塚音楽学校を主席で卒業

 小柳さんは18歳のとき、1970年にNHKの連続テレビ小説「虹」でデビューし、今年(2020年)で芸能生活50周年を迎えた。大ヒット曲「わたしの城下町」で歌手デビューしたのは翌71年のことだ。

 「第一章 懸命に駆け抜けた芸能界での50年間」では、デビューの経緯から独立、結婚と離婚などを振り返っている。

 一部ではよく知られた事実だが、小柳さんは宝塚音楽学校の出身だ。娘を歌手にするという母の夢をかなえるため、幼少期からお稽古事の特訓を受けた。日本舞踊、クラシックバレエ、ジャズダンス、タップダンス、歌、ピアノ、三味線、習字と8つもだ。

 15歳で宝塚音楽学校に合格したが、それはステップに過ぎなかった。卒業後は渡辺プロダクションに入れて、歌手デビューさせるのが母の最初からの目標だった。

 福岡の同郷の先輩であり、宝塚音楽学校経由で渡辺プロに所属していた梓みちよさんの母を小柳さんの母は訪ね、その伝手で渡辺プロの渡辺晋社長との面談にこぎつけた。

 「ああ君か、それじゃあ宝塚(音楽学校)を首席で卒業したら考えてあげる」

 それまでずっとトップの成績を続けていたので、社長の言葉通りに首席で卒業、渡辺プロへの入所が決まった。

 宝塚からは猛烈に引き留められた。「夏川るみ」の名でいったん宝塚歌劇団に入団し、1970年に2カ月の公演を終えると同時に退団。「宝塚ならではの華やかな舞台に立てたことは、今となっては素晴らしい思い出です」と書いている。

歌手・小柳ルミ子のイメージに違和感

 その後「わたしの城下町」「瀬戸の花嫁」(72年)とヒット曲に恵まれ、歌手として成功を収めたが、内心違和感があったという。

 「『日本的な女の子=小柳ルミ子』がすっかり定着し、周りが私に寄せるイメージや期待と、素の自分とがどんどんかけ離れていくことに次第に焦りを感じ始めたのです」

 本来の小柳さんは、とても活動的で、特に子どもの頃から培ったダンスが自分の個性であり武器だと思っていた。「私はとにかく踊りたかった」。後年ダンサーの大澄賢也さんと結婚し、一緒にステージで踊る萌芽は、この頃からあったのだ。

マネジャーがつかず独立を決意

 渡辺プロから独立した事情も初めて明かしている。なんと小柳さんの現場にマネジャーがつかないことが何カ月も続いたのが原因だった。タレントとマネジャーの兼務では仕事に集中できない。断腸の思いで独立を決意。ホテルのディナーショーの本番中に客席に向かって宣言したという。

 ちょうど結婚とタイミングが重なり、「恩知らず」「色ボケ」とワイドショーをはじめメディアから批判も浴びた。さらに芸能界から干され、キー局のテレビに出演できなくなった。地方のステージの仕事が生活の綱となった。

 離婚の際もバッシングを受けた。離婚条件については一切ノーコメントを貫いた理由をこう書いている。

 「相手があることなので、離婚をめぐる条件の真相はやぶの中にしておきます。ただ、私が真実を言わなかったのは、それをすると大澄さんのことも、これまでの結婚生活も、すべて否定することになると思ったからです」

サッカー観戦は最高の趣味

 趣味についても語っている。サッカー観戦は「分析」することが大好きなので、終生最高の趣味だという。欧州四大リーグのほか、南米や中南米のリーグ、日本ならJリーグから高校サッカー、U-17やU-12の試合まですべて、徹底的に観戦している。

 その環境を整えるため、地上波やBS、CSをはじめ、動画配信サービスにも加入。スマホやタブレット端末を常に持ち歩き、「1日24時間365日、サッカーを観ないという選択肢はないのです」。1日4時間しか寝ないが、問題はないと断言している。

 「高齢者のセックスを否定しない」「私には不倫をとやかく言う資格はない」など、気になる見出しも出てくるが、恋愛への興味はゼロで、「まして再婚などごめんです」と書いている。

 通して読んで感じたのは、とにかくアクティブで、どちらかと言うと「男性的」な思考だ。何事も分析するのが好きで、「ハマったらとことん極める性分」なのだ。麻雀の腕前もプロ級だ。麻雀番組の「THEわれめDEポン」(フジテレビ)では、3度の優勝経験がある。評者も番組で小柳さんを何度か観たが、さっそうと牌を切る雀士ぶりにしびれた。

 70代に向けて、どんな活動を見せてくれるのか楽しみだ。

 BOOKウォッチでは、作家・林真理子さんが俳優・浅丘ルリ子さんの半生を描いた『RURIKO』(株式会社KADOKAWA)のほか、歌手・俳優の小林麻美さんの評伝『小林麻美 第二幕』(朝日新聞出版)、歌手・由紀さおりさんの著書『明日へのスキャット』(集英社)などを紹介済みだ。

  • 書名 もう68歳と思うのか、まだ68歳と考えるのか
  • 監修・編集・著者名小柳ルミ子 著
  • 出版社名徳間書店
  • 出版年月日2020年9月30日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・189ページ
  • ISBN9784198650957
 

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