この冬休み中、わが子に良質な読書体験をさせたい。親戚の子に贈る児童書を探している......。そんな方に、翻訳児童書『12のバレエストーリー』(小学館)を紹介したい。本書は小学3年生からの「読むバレエ名作物語」。内容もしっかりしていて、デザインも豪華。贈っても贈られても嬉しくなりそうな一冊だ。
本書を手にした瞬間、どっしりと重厚感がある。カバーはホロ泊があしらわれキラキラしている。挿絵は精巧な影絵のようで見入ってしまう。紙はつるつるしていてしっかりした質感。内容とともに、思わず手に取りたくなる装丁、ずっと手元に置いておきたくなる装丁であることも、本を選ぶ際の基準になる。
また、わかりやすい文章でバレエを表現し、小学3年生以上で学ぶ漢字にはすべてルビを付けている。既刊書『ひとりよみ名作 バレエものがたり』(小学館、2015年)にくらべて、本書は「もう少し読み応えを増したお姉さん版を」というニーズに応えたものだという。
「小学3年生から」とあるのでサラッと読み終わるかと思ったが、文字数・ページ数ともに意外と多く、読み応えがあった。読書に慣れている場合、小学3年生から一人で読めるだろう。ただ、文字は大きめで難しい文章はないものの、読書に慣れていない場合、最初は親が読み聞かせをしたり、親子で一緒に読んだりするのが良さそうだ。
「まるで舞台をみているかのような、心おどるシーンもたっぷり。すべてのバレエファンをうっとりさせる魔法の世界へ、さあ、ごいっしょに!」とカバーにある。バレエを習っている子どもをはじめ、バレエ鑑賞が趣味、バレエの世界に憧れがあるという方にオススメ。本書を読めば、12の名作のストーリーをひと通り把握でき、バレエの優雅な雰囲気に浸ることができる。
本書は、バレエでよく上演される12の名作物語――「シンデレラ」「白鳥の湖」「ねむれる森の美女」「ドン・キホーテ」「コッペリア」「くるみわり人形」「火の鳥」「ジゼル」「オンディーヌ」「ラ・シルフィード」「リーズの結婚」「ロミオとジュリエット」――を集めている。それぞれの冒頭に以下のようなバレエ解説があり、20ページ前後の物語が続く。
「シンデレラ」
何百年も前から語りつがれてきた物語。作曲家のプロコフィエフが1940年代に発表したこのバレエ作品は、17世紀にシャルル・ペローが書いた本をもとにしています。
「白鳥の湖」
ドイツとロシアの民話をもとにした、ジークフリート王子と白鳥の女王オデットの悲しい恋の物語。音楽はロシアの作曲家チャイコフスキーの作で、1877年に初演されました。
「火の鳥」
ロシアの民話にもとづくバレエで、火の鳥と魔物が対決するドラマティックなストーリー。ロシアの作曲家ストラヴィンスキーの音楽で、1910年にパリで初演されて大成功をおさめました。
「ロミオとジュリエット」
シェイクスピア作「ロミオとジュリエット」は、不運な恋人たちの悲しい物語。プロコフィエフ作曲のこのバレエ作品は、20世紀に生まれた、とても情熱的な作品です。
解説を読むと、バレエにおいて音楽は重要な役割を担っていることがわかる。実際のところ、バレエは音楽を身体表現したものと言われている。巻末に紹介されている原書でまとめられた英語サイト「Usborne Quicklinks」にアクセスすると、バレエの舞台上演の様子を見ることができる。そこで見る音楽、ダンスと本書の文章、挿絵が重なり、物語を立体的に楽しむことができるようになっている。
バレエ経験なし、物語のタイトルは知っていても内容は知らないものが多かった評者は、異文化体験の感覚で読んだ。装丁も挿絵もストーリー展開もひっくるめて、好感度が高かった。子どもに勧めたり贈ったりする本は、自分が読んで良かったと思えるもの、またページを開きたくなるものにしようと思う。
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