にしのあきひろさんの6作目となる絵本『チックタック~約束の時計台~』(幻冬舎)は、発売前に重版がかかったほどの超話題作。
お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣さんは、絵本作家「にしのあきひろ」としてお名前を見かけることが増えた。その活動は芸人の枠をとうに越えて、ビジネス書を出したり、デザインしたラッピングの「ニシノクラウン」が公開されたり、近畿大学卒業式のスピーチ動画が230万回以上再生されたりと、話題が尽きない。
西野さんは、1980年兵庫県川西市出身。99年にお笑いコンビ「キングコング」結成。養成所時代から注目され、2001年「はねるのトびら」(フジテレビ系)レギュラーに抜擢される。09年『Dr.インクの星空キネマ』により「にしのあきひろ」名義で絵本作家デビュー。
この他の絵本に『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』、小説に『グッド・コマーシャル』、ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』、共著に『バカとつき合うな』がある。
現在は『えんとつ町のプペル』の映画製作、美術館創設も進めている。また、有料会員制コミュニティー(オンラインサロン)「西野亮廣エンタメ研究所」を主宰し、会員数は2万2000人を突破。
絵本『チックタック~約束の時計台~』の舞台は、ラオスと西野さんの地元である兵庫県川西市。ラオスを舞台に選んだのは、森と建物に惹かれたから。
西野さんが語った、構想に5年以上費やしたという「時計の話」を要約すると......
時計は、1時間に一回短針と長針が絶対重なるが、11時台だけは絶対に重ならない。短針が逃げ切って、次に重なるのは12時。12時の鐘がカランとなるということは、すでにすごい物語がある。大きいことを成し遂げる前は、報われない時間、11時台が結構ある。
西野さん自身、20歳という若さでレギュラー番組を持ったものの、20代半ばに芸人としての葛藤を抱えていた。「これは今は11時台なんだと言い聞かせるため、自分に向けて描いてた感じ」と語っている。
「幻冬舎は宣伝文句として『にしのあきひろ作品史上、もっとも残酷で、もっとも美しい物語。』と打ち出していますが、誇大広告ではありません」と西野さんはブログに書いている。では、「時計の話」はどんな物語になっているのか。
ホタルの森に、こわれていないのに11時59分で針が止まっているふしぎな時計台があった。時計台に住むヘンクツジジイのチックタックは、それでもまいにち歯ぐるまの手入れをしている。
もう何年も前、孤児院にあたらしくやってきたニーナが、チックタックの時計台にあそびにくるようになった。チックタックとニーナはそこでたくさん話しをした。あるとき、ニーナはある秘密をチックタックに告げた。チックタックは「だいじょうぶだよ」とニーナに言った。
よるになると、鐘の音で目をさましたホタルたちがいっせいにかがやきだし、まるで星空のなかにいるようになる。ふたりは「よるの12時の鐘をふたりできこう!」と約束した。その三日後、悲劇はとつぜんやってきた――。
本書はひらがなが多く、すべての漢字にルビが付いているため、子どもが1人でも読める。また、同じページに日本語と英語、2つの表記があるため、英語の学習にもなる。
西野さんは独学で絵を学んだというが、その美しさに魅了された。自然描写が細密で、動物たちの表情が豊か。光の描写は、紙面から漏れてきそうなほどまぶしく、強く印象に残っている。
やさしい言葉で書かれているからこそ、読者は想像力を発揮して、その奥にある西野さんの思いを読み取ることになるだろう。読み返すたびに深みが増していく。年齢も国も問わず、この先も多くの人々に読まれる絵本になるだろう。
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