お笑い芸人、ロバートの秋山竜次さんが、いろいろなクリエーターになりきってインタビューに登場する「クリエイターズ・ファイル」は、紙と電子のフリーマガジン「honto+」で連載中だ。それの書籍化も第3弾となり、本書『クリエイターズ・ファイルVol.03』(ヨシモトブックス 発行、ワニブックス 発売)が刊行された。
秋山さんが老若男女を問わず、さまざまなクリエーターに変身している。名前と肩書を一部列挙すると......。
藤原采(17)清純派女優、ピーター・マイアン(没、91歳)イラストレーター、盛伸市(37)トータル・バリスタ、折原福之介ワールド・トラベル・ママチャライダー、押上希江(48)魔性の女詐欺師.......。クリエーターということだが、中には詐欺師やアンドロイド、妖怪まで20の芸を披露。本文には写真とインタビュー、付属のDVDに画像が収められている。
この種の形態(職業?)模写で思い出したのが、かつてのイッセー尾形さんだ。医者やN響楽団員、単身赴任のサラリーマンなどに扮し、ある種困難な状況を独り芝居で演じて、評判になった。テレビでも放送され本にもなった。
イッセーさんは芝居であり演劇だったが、秋山さんのこのシリーズは楽曲のプロモーションビデオ風でもあり、写真集のようでもある。インタビュー本文は設定、内容ともにそれらしく作られていて、工夫を感じさせる。
と言ってもそこはロバート秋山。伝説のバリスタ編では、インドネシアのジャコウネコの糞から作る豆にヒントを得て、「猫にできるなら人間にだってできるのではないかと思った」とのことで作ったコーヒーとか、とんでもなさでは人後に落ちないものになっている。
女性への変身願望があるのだろうか、6人の女性役に挑戦している。中でも傑作なのが、「予約3年待ち LA発 美尻のカリスマ」こと、パーソナルヒップトレーナーのMICO(37)だ。いい加減なレッスンで、次の予約が取れるのは5年後ということだが、パワフルな体型に圧倒される。
本書はクリエーターの気質にこだわり、それらしいことを語らせている。「アーティステッィク・グラビア写真家」の我孫子進平(57)の場合は......。
「僕に撮られる女性は、緊張しちゃうんですよ。結果的に、ナチュラルな表情が撮れない。だから、僕は現場を離れ、遠くから電話でアシスタントに細かい指示を出し、撮影させているんです」
この撮影手法は業界では「我孫子ダイヤル」と呼ばれているとか、業界を斜めから見た箇所があちこちに登場する。
書き忘れたが、本書の各パートには秋山さんのほかに、それぞれ出演者がいる。また写真の撮影には、さまざまな設定の家族写真で木村伊兵衛写真賞を受賞した浅田政志氏らを起用するなど、スタッフの力も大きいようだ。
「よくもまあ、こんなこと」と呆れるようなことを発想する秋山さんとそれを実現するスタッフ。紙と電子のフリーマガジン「honto+」での連載はまだまだ続きそうだ。
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