読むべき本、見逃していない?

読売新聞の「出会い系バー通い」記事の仕掛け人は?

  • 書名 内閣情報調査室
  • サブタイトル公安警察、公安調査庁との三つ巴の闘い
  • 監修・編集・著者名今井良 著
  • 出版社名幻冬舎
  • 出版年月日2019年5月30日
  • 定価本体840円+税
  • 判型・ページ数新書判・221ページ
  • ISBN9784344985551

 きわめてストレートなタイトルの本だ。『内閣情報調査室――公安警察、公安調査庁との三つ巴の闘い』 (幻冬舎新書)。

 秘密のベールに覆われた日本の情報機関の実像がどの程度明らかにされるのか。とにかく「内閣情報調査室(内調)」をタイトルにした本は珍しいから、門外漢にも興味がわく。「初めて明かされる、『官邸直轄スパイ機関』の真実」というキャッチコピーが付いている。ますます前のめりになる。

著作を連発

 著者の今井良さんは1974年生まれ。中央大学文学部を卒業してNHKに入局し、地方局や東京の報道局ニュースセンターでニュース番組の制作に10年携わり、その後、民放テレビ局に移った人だ。2014年の『警視庁科学捜査最前線』 (新潮新書)を皮切りに、17年は『マル暴捜査』(新潮新書)、『警視庁監察係』(小学館新書)、そして本欄でも紹介済みの『テロvs.日本の警察 標的はどこか? 』(光文社新書)と著作を連発している。

 本書には当然ながら、幾つもの興味深い記述があった。まず、内閣情報調査室の要員。今は250人ほどいるという。かつては100人ぐらいではなかったか。2000年代は170人ぐらいだったようだ。ずいぶん増えたものだと驚いた。

 現在のトップは警察庁出身の北村滋内閣情報官。2011年12月からすでに7年以上も在職している。官僚としては異例の長さだ。「内閣情報官」という呼称からは、「偉さ」を伺えないが、省庁の事務次官もしくはそれ以上に相当するらしい。

 その北村氏は毎週2回、安倍晋三首相に報告のために面会している。報道機関のまとめによると、2017年に首相との面会回数が最も多かった人物が北村氏だという。「毎週火曜日と木曜日の週2回、必ず官邸に足を運び総理と『サシ』で面会している行政職員」だという。

 安倍首相との縁は深い。2006年の第一次安倍内閣で総理秘書官を務めている。官邸を牛耳る杉田和博官房副長官は元内閣情報官。警察庁の先輩でもあり、ツーカーの間柄だ。

様々なマスコミ工作も担当

 本書ではいろいろとリアルな話が登場する。例えば北朝鮮による拉致問題解決に向けてのやりとり。内調の国際部門の主幹と、北村内閣情報官との二人だけの会話が出て来る。内調は「特定秘密保護法」を所管しているとも書いてあったので、どうやって取材したのだろうかと気になった。2018年5月19日に放送された「NHKスペシャル 日本の諜報」についての反応も出て来る。番組内容について「杉田官房副長官と北村内閣情報官は憤りを隠さなかったという」とのことだ。評者は見てないので、単行本になったら読んでみよう。

 内調は様々なマスコミ工作も担当しているそうだ。その一例として「出会い系バー通い」報道が挙げられている。2017年5月22日、読売新聞が報じたものだ。本書では当該人物は「文科省のM事務次官」とされている。プライベートな行動を読売新聞だけが詳細に記事化したことについて、著者自身も驚いたと振り返っている。

 そのネタ元だが、本書は「複数の関係者の話を総合すると、この文科次官に対するマスコミ工作には内閣情報調査室が関わっていたという」と書いている。M次官の言動・思想が日本の官僚のトップ、杉田官房副長官の不興を買ったからとされ、内調に素行調査の指示が下りて、それが報道につながったことを強く示唆している。当時、記事の適否が論議を呼んだことは記憶にあるが、こう書かれては読売新聞もバツが悪いのではないか。

元キャリア官僚3人が浮上

 もちろん「情報組織」の側も一枚岩ではない。2018年に講談社から出た『官邸ポリス 総理を支配する闇の集団』はとりわけ問題視されたようだ。「元警察庁キャリア官僚が書いたリアル告発ノベル」と銘打たれていたからだ。「小説」とはいえ「92%は現実」と称していた。さっそく書き手探しが始まったという。そこで浮上したのが警察庁を中途退職した元キャリア官僚3人。本書では各人についての具体的な理由が記され、最終的にその中の一人が有力となったらしい。その人物については現在も行動確認を続け、監視下に置いているという。

 本書の問題意識は「年々、存在感を強めている、内閣情報調査室はどこに向かうのか」というところにある。図書館などで調べたところ、類書はあるが、最近の「内調」をタイトルにしたのは本書だけ。新しいデータや事例が多く参考になる。

 著者は「本書執筆にあたり、内閣情報調査室、警察庁、公安調査庁の多くの関係者にお話をうかがった。この場を借りて感謝申し上げたい」と書いている。その意味では、本書も当局による「マスコミ工作」の一環ではないかとのうがった見方もあるかもしれない。しかし、上述のように内容はなかなか克明だ。日本の政治やマスコミ関係者だけでなく、海外の情報関係者にとっても「貴重な公開情報」になるのではとも思った。

 

 本欄では、『自衛隊の闇組織――秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書)、『ドローン情報戦――アメリカ特殊部隊の無人機戦略最前線』(原書房)なども紹介している。

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