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毎月1冊本を書く著者が明かした時間の使い方

プロの時間術

 毎月1冊10万字、本を書き続けるブックライター、上阪徹さんがその秘訣を明かしたのが本書『プロの時間術』(方丈社)だ。

 『企画書は10分で書きなさい』(方丈社)、『これなら書ける! 大人の文章講座』(筑摩書房)、『10倍速く書ける 超スピード文章術』(ダイヤモンド社)などビジネス書、文章術の本を多数出しているが、「毎月1冊なんてありえない」と思ったら、ブックライターという肩書きに秘密があった。

ブックライターの肩書き作った

 かつては「ゴーストライター」と呼ばれた仕事。本の著者に代わって本を書くのがブックライターだ。「多くのケースで10時間ほどインタビューをさせてもらい、その話をもとに本の原稿を書き起こす」という。確かにこれなら効率がいい。この肩書きも上阪さんが作った。

 しかし、このほかにも月刊誌のインタビュー連載や雑誌の特集の取材などの仕事もあり、相当多忙のように思うが、基本的に土曜日、日曜日は仕事をしないという。時間をずいぶん上手く管理していると思い、前のめりになり読み進んだ。

「小分け」と「時間割」

 キーワードは「小分け」と「時間割」だ。あらゆる仕事を小さく分割して「小分け」にし、それを1時間枠の「時間割」に当てはめる日々を送っているそうだ。

 最終的なアウトプットまで、かかる時間を見積もることから始めるのがコツだという。

 著者と同様に文筆業界に生息する評者としても、参考になる点が多々あった。でも、どれだけの時間がかかるか見積もり通りに行かないこともよくあることだ。

 上阪さんがどう対処しているかと思ったら、「これはやらない」という仕事を決めているそうだ。自分に合わない仕事、自分の苦手な仕事、具体的に言えば上阪さんは技術や科学の専門家を読者対象にした仕事は引き受けないという。「相場観のわからない仕事をすることは、極めて危険」だからだ。

 さて、いざ書くときのポイントは何か。「文章の素材」は3つあるという。
 ・事実 ・数字 ・エピソードだ。素材の整理に2、3日かけて一気に書くのが上阪さん流だ。

 本書は原稿を書く人には特に参考になるだろう。しかし、企画や営業など普通のサラリーマンが読んでも役に立つ時間術も盛り込まれている。

 上阪さんは仕事柄、経営者や起業家、タレント、スポーツ選手、科学者、作家ら3000人以上にインタビューしてきた。彼ら「成功者」に共通しているのは、時間を大事にしている、さらに言えば、「時間を大事にする人と付き合っている」と書いている。

 上阪さんは自分からフリーランスの仕事を選んだ訳ではない。リクルートグループから転職したベンチャー企業が倒産。思わぬ失業という形でフリーランスの仕事を選ばざるを得なかったのだ。

 最後に、「多くの人が想像しているほど、フリーランスという働き方は会社員の遠くにあるわけではない」と結んでいる。昨年(2018年)11月に心臓発作に襲われ、九死に一生を得た上阪さん。「明日は保証できない。時間を大事にしなければならない」ということばが真に迫る。時間術の本だが、人生論としても面白く読んだ。

  • 書名 プロの時間術
  • サブタイトル大人の時間割を使えば、仕事が3倍速くなる!
  • 監修・編集・著者名上阪徹 著
  • 出版社名方丈社
  • 出版年月日2019年6月11日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・231ページ
  • ISBN9784908925474
 

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