著者の小泉信一さんは朝日新聞編集委員。大衆文化・芸能担当という肩書で朝日らしくないネタを親しみやすい文章で数多く書いてきたので、名前を知っている人もいるだろう。「寅さん」とか浅草が似合う記者だ。
その小泉さんが「週刊朝日」で「愛人バンク」とか「トルコ」とか、あまり人前で言いにくい風俗の源流を探った不定期の連載を始めたのが2016年。このほど本書『裏昭和史探検』(朝日新聞出版)にまとまった。よくもまあいろいろ調べたものだ。
項目を少し挙げてみるだけで、その怪しさがわかるだろう。
額縁ショー、薔薇族、ブルーフィルム、赤線、のぞき部屋、テレクラ、ハッテンバ、アダルトビデオ、SMクラブ......。
新聞本紙では扱うことのできないネタが少なくない。週刊誌だから出来たということもあるだろうが、そこは「良識の朝日」。下品にならないぎりぎりのところで表現を抑制している。感心したのはよく昔の写真を集めたこと。昭和が伝わってくる。
個々の項目を要約・紹介するのは控える。わかる人にはわかる。わからない人にはわからない世界だ。つくづく思う。昭和の日本人は性の探求者だったと。次から次へと新しい風俗を開発したエネルギーの根源はなんだったのだろう。発明されたものすべてがヒトとヒトとが相対する、なまなましさに包まれている。
ひるがえって「平成の風俗」とは何があったのか? 昭和から続いているものもあるが、平成に生まれたものは、DVD付きの雑誌、ネットでの画像配信など体温の感じられないものが多い。さらに「エロ」への需要は減るばかりだ。先日、異性との性交渉を経験したことのない成人が増えており、2015年時点で30代男女の1割が未経験だったという調査結果を東大客員教授らのチームが英国の医学誌に発表、話題になった。「草食系」の実態が裏付けられた。
本書は三部構成だが、風俗ネタを集めた「夜の街をたどって」が出色の面白さだ。「ステッキガール」など、かつて風俗通を自認した評者でも聞いたことのないものもあり勉強になった。
第二部「未確認生物をたどって」、第三部「UFO伝説をたどって」は、著者のライフワークだと言い、それぞれ朝日新聞夕刊連載をまとめた。
「夜の街をたどって」の付録として「写真時代」編集長などをつとめた末井昭さんとの対談を収めている。「昭和のエロには愛があった」と二人は共感。キャバレーの看板書きからスタートした末井さんの体験談が抱腹絶倒だ。
本欄では風俗関連として『流れて、流しの新太郎』(ベストセラーズ)、『デリヘルドライバー』(駒草出版)、『裸の巨人』(双葉社)、『ストリップの帝王』(株式会社KADOKAWA)などを紹介している。
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