国際問題や経済・金融評論家として多数の著書がある副島隆彦さんが、生命保険で大失敗した話――それが本書『生命保険はヒドい。騙しだ』(幻冬舎新書)。恥をしのんで顛末を公開したという。全編に副島さんの無念と怒りが渦巻いている。憤怒の大きさを象徴するかのように、本文の活字も大活字本のように大きい。
副島さんはいま65歳。大手生命保険会社の生命保険に毎月5万6000円の保険金を払っている。この25年間で総額1300万円ほど払い込んだ。保障契約は5000万円。死んだら5000万円が払われるというわけだ。
しかし、一つのワナがあった。この保険は今度、68歳で見直し時期を迎える。その時、保険料は一気に16万3000円に上がると生保会社に言われた。新しい「ご契約プラン」にそう書いてあった。副島さんは思わず「なぜこんな大きな金額になるんだ」と叫んでしまった。そして、この保険のカラクリについて調べ始めた。
その結果、恐ろしいことがわかった。この保険は主契約が100万円、疾病特約が100万円、残りの4800万円は「定期保障契約」という、いわば「掛け捨て」だということが。
つまり、満期が来た時に生きていたら100万円しかもどってこない。これまでに1300万円も払い込んでいるというのに・・・。「しまった、と気づいたときには、もう遅かった」。幸いにも健康体。68歳までに死にそうもない。「謀られた。私はまんまと騙されたのだ」「ああ私はバカだった」。
経済問題が専門の副島さんは、「日本の生命保険は、外国に比べて契約者(お客)への償還率が非常に低い」という話を以前から耳にしていた。香港に行ったとき、現地の生保の代理店から聞いたこともある。しかし、その話を真に受けなかった。だから25年間も払い続けていた。
自分の生命保険の問題で、怒り心頭に達した副島さんは生保と直接交渉に臨む。本書では「契約内容のおかしさを保険会社に訴えた」「私が保険会社に詰問した4つの主張」という章でたっぷり交渉状況が記されている。
もちろん副島さんは、「そんなこと言ったって、生命保険というのは、本来そういうものだよ。死んだら大金(保険金)が入る仕組みなんだから。それを了解して入ったんだから」「文句を言うおまえがおかしい」という「冷酷な世の中からの反論のコトバ」についても記している。保険会社の「お客様係」からも、「リスクを(当社は)引き受けていますので」と言われたという。
確かに、保障が高額な保険は、支払いも高くなるし、おおむね65歳を過ぎてまだ保険に入り続けようとすると掛け金は上がることが多い。生命保険は、現役世代で死んだときは助かるが、老後も延々と払い続けるものではない、という指摘は最近よく耳にする。そのあたりをこれまで保険会社がどの程度はっきり説明していたか、ということだろう。
世の中には副島さんのように、保険会社の言うままに、過大な契約をしている人も少なくないと副島さんは思っている。そういう人やこれから契約する人に、自身のケースを参考にしてもらい、「みんな、目を醒ましてください」と願って書いたのが本書だ。売れたら、副島さんの「損失」がある程度は補填されることになるはずだ。
関連で本欄では『投資バカ――50歳を過ぎたら取ってはいけないお金のリスク』 (宝島社新書)、『火災・盗難保険金は出ないのがフツー 』(幻冬舎新書)、『荻原博子のグレート老後』(毎日新聞出版)、『持たない暮らし』(埼玉福祉会)なども紹介している。
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