1年間に発売される新刊書籍は、約8万冊強だという。今年1年で、自分はそのうちの何冊を読み、何冊が印象に残っているかと考えてみた。今の気分にピタリと当てはまる1冊を見つけ出すのは難しく、これは! と思える書籍との出会いは貴重だ。
本書『たとえば、君という裏切り』(祥伝社)は、TSUTAYA書店員がまだ書籍化されていない投稿小説や企画段階の小説の中から自信を持ってオススメできる作品を見つけ出し、書籍化するプロジェクト「書店スタッフが選ぶ『新刊プロデュース文庫』」によるもの。J-CAST「BOOKウォッチ」で紹介済みの『たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に』(祥伝社)と同じく、著者・佐藤青南さん、原案・栗俣力也さんがタッグを組んでいる。
本書は「最期のインタビュー」「名前だけでも教えて」「公園のお姫さま」の3つの物語で構成され、「最期のインタビュー(追記)」で幕を閉じる。
フリーライター・早田のもとに、ベストセラー作家・鴨志田玲からメールが届く。鴨志田と面識もなく知名度も低い早田は怪しむが、鴨志田から「私を取材して欲しい」「客観的に書いて欲しい」と依頼される。鴨志田は病気治療のため断筆するにあたり、覆面作家であるが故に構築された虚像を壊したいのだという。掲載媒体は未定という点は引っかかったが、破格の原稿料に惹かれて早田は引き受ける。(「最期のインタビュー」)
大学生・望月はアルバイト先の常連客に恋している。行きつけのファミレスの店員に声をかけられたら気持ち悪がるだろうかと心配しつつ、望月は徐々に彼女への接近を試みる。(「名前だけでも教えて」)
小学三年生の和津が公園で出会った「お姉ちゃん」は、自分のことを「遠い国のお姫さま」と呼び、世界を手に入れられるクリスタルを七つ揃えるため世界中を旅しているという。「このままでは世界が滅亡する。それを防げるのは私と、選ばれし者たちだけ」と言われた和津は、「お姉ちゃん」と放課後に過ごす秘密の時間が楽しみになる。(「公園のお姫さま」)
「最期のインタビュー(追記)」は、単に1話目「最期のインタビュー」の追記ではなかった。読者はここでようやく、無関係に見えた3つの物語に実は密接な関連性があることを知らされる。3話分の登場人物、時代、出来事を整理する必要に迫られ混乱したものの、ようやく全体像が理解できた時、構想の緻密さに驚いた。予測不能な展開に、意表を突かれること間違いない。
著者の佐藤青南さんは、1975年長崎県生まれ。熊本大学法学部を除籍後、ミュージシャンに。『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し、2011年『ある少女にまつわる殺人の告白』(宝島社)でデビュー。本欄では『君を一人にしないための歌』(大和書房)も紹介済み。
原案の栗俣力也さんは、1983年東京都生まれ。東京デザイン専門学校卒業後、ゲーム会社を経て、2007年より書店員に。人目を引く売り場作りで数々の作品をヒットに導き「仕掛け番長」と呼ばれる。絶版文庫の復刊プロデュース、イベント企画や運営も手がける。
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