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第二章以降の展開に息を飲む、嘘にまみれた三角関係

たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に

 本書『たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に』(祥伝社、2017年)は、著者の佐藤青南が書店員の栗俣力也から「今、一番読者に読ませたい!」物語のアイディアをもらい、膨らませて小説化したもの。書店員が作家に執筆を依頼し、後に版元が決まるという異例のプロセスを経ている。

 BOOKウォッチで紹介した、同じく佐藤青南による『君を一人にしないための歌』(大和書房)は、高校生が謎解きをしていく日常ミステリー。「ミステリー」と謳いつつ、全体的に穏やかで平和な印象を持った。

 本書の帯には「ページをめくる手が止められない、純愛ミステリーの決定版!」とある。果たしてそれは本当かと思ったら、「ミステリー」の度合いが高く、全くもって予想外の展開を見せ、グングン読み進んだ。

 僕・伊東公洋は、上司のパワハラに悩みながら司法書士試験の勉強をする冴えない日々を送る。彼女いない歴2年だが、今の生活では彼女を欲しいと感じることもなかった。ある日、飲み屋の店長から偶然近くで飲んでいた大学生の奈々を紹介される。「こんなかわいい子が僕なんて相手にはしないだろう」と思ったが、「デートしてみよっか」と奈々は言った。

 僕は奈々と何度か会ううちに、奈々への恋心を確信する。ところが同じ頃、同僚の佑子から好意を寄せられていることに薄々気づき始める。佑子から僕に向けられる異様な執着、佑子に託した郵便物が発送されずに起きた仕事上の致命的な事態、僕の置かれている状況が次第に狂い始める。

 「彼女は大きな秘密を抱えている気がする」「僕が相手にしているのは、とんでもない怪物なのかもしれない」。僕、佑子、奈々のそれぞれの恋心は、真実か、嘘か――。第一章の終わり、佑子の正体を知った僕はある決断をし、佑子をホテルへ誘う。第二章で僕と佑子の間にどんなやりとりがなされるのかと思ったが――。ここまでの意外性は、なかなか味わえないのではないか。間違いなく、夢中になって一気読みできる。

 著者の佐藤青南は、1975年長崎県生まれ。熊本大学法学部を除籍後、ミュージシャンに。「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し、2011年『ある少女にまつわる殺人の告白』(宝島社)でデビュー。著書に『ジャッジメント』『市立ノアの方舟』(ともに祥伝社)の他、人気シリーズ「行動心理捜査官・楯岡絵麻」(宝島社)、「白バイガール」(実業之日本社)など。

 原案の栗俣力也は、2014年からTSUTAYA三軒茶屋店勤務。人目を引く売り場作りで数々の作品をヒットに導き、「仕掛け番長」のニックネームを持つ。絶版文庫の復刊プロデュース、イベント企画や運営も手がける。著書に『マンガ担当書店員が全力で薦める本当にすごいマンガはこれだ!』(TOブックス)など。

BOOKウォッチ編集部 Yukako)
  • 書名 たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に
  • 監修・編集・著者名佐藤 青南 著 / 栗俣 力也 原案
  • 出版社名株式会社祥伝社
  • 出版年月日2017年12月20日
  • 定価本体620円+税
  • 判型・ページ数文庫本・281ページ
  • ISBN9784396343767
 

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