本書『君を一人にしないための歌』(大和書房、2017年)は、音楽をきっかけにつながった高校生3人が謎解きをしていく、日常ミステリー。音楽シーンを彩る往年のバンドや名曲に関する記述が多く織り込まれている。
中3の夏、全国出場をかけたブラスバンド部のコンクールで大失敗を犯した僕は、それ以来ドラムから遠ざかっていた。ところが、高校入学後1か月が過ぎたある日、「選ばれたから、あたしのバンドのメンバーに」と見知らぬ女子生徒に声をかけられ、僕はバンドを組むことになる。
勉強も部活も恋もパッとせず、淡々と過ぎていた僕の高校生活が、本当の意味でのスタートを切ったのはこのときだった。強引で傍若無人な彼女が、過去の失敗を引きずって好きなことから逃げていた僕を、再びドラムに引き戻してくれた。
バンドメンバーは、ボーカル兼リーダーの七海、ベースの凜、ドラムの僕の3人。口が悪く強引だが、心根は優しい七海。物静かで、音楽の知識が豊富な凛。なぜ自分が誘われたのか理解できない僕。早速バンド活動が始まると思いきや、何度募集をかけてもギタリストが決まらない!
前のバンドを辞めさせられると思い込んで自分から辞めた人、シド・ヴィシャスに呪われたから辞めると言い出す人、スタジオ練習中に黙って帰ってしまう人、家庭に問題を抱える人、七海に怨みを持つ人......。応募してきた彼ら全員が、バンドからすぐに離れてしまう。僕たち3人は、彼らの不可解な行動や態度に隠された理由を明かし、円満な決着へ導いていく。
音楽という共通点を持つ登場人物たちは、人に言えない事情を抱えているが、最後は自らを肯定できるようになる。一体いつになったら演奏シーンが出てくるのかと思いつつ、次々とやって来るギタリスト候補者たちの問題が解決されていく過程が楽しい。最後に七海のバックグラウンドが描かれ、七海が僕をバンドに誘った理由がわかる。
著者の佐藤青南は、1975年長崎県生まれ。『ある少女にまつわる殺人の告白』(宝島社)で第9回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し、2011年同作でデビュー。16年『白バイガール』(実業之日本社)で第2回神奈川本大賞を受賞。他の著書に『行動心理捜査官・楯岡絵麻』シリーズ、『消防女子!! 高柳蘭』シリーズ(ともに宝島社)など。
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