ある歌を聞いて「前に聞いたことがあるような...」と感じたことはないだろうか。ヒット曲についてたまに「パクリ疑惑」が指摘されたりもする。本書『すべてのJ-POPはパクリである』(扶桑社)は、新しい曲になぜか感じる既視(聴?)感の理由を解き明かす。
著者のマキタスポーツさんは、お笑い芸人、ミュージシャン、俳優として知られるが執筆活動にも意欲的だ。本書は4年前に単行本として刊行されたものが文庫化されたもの。タイトルは刺激的だが、その内容は、著者が音楽活動を通じて発見・解析したというヒット曲の法則などを冷静に論じている。
ミュージシャンとしては長く「アンダーグラウンド」で活動してきたという著者だが、2011年に「十年目のプロポーズ」がヒット。この曲は、それまでのヒット曲の傾向を「分析、検証、再構築」して作り上げたものという。
「もともと音楽理論を学んできたようなタイプの人間ではない」というマキタさんだが、試行錯誤を繰り返すうちに「ヒット曲にはある共通のパターンがある」ということに気付く。それをみずからの創作に採り入れ仕掛けたところ、まんまと当たったものだ。ヒット曲には歌詞にも定番があり、楽曲構成などに共通点があるという。
だが歌のすべてヒットするわけではない。「ヒット曲っぽい曲」はだれでも作れるようにはなるのだが、そこまでの「プログラミング」に、こんどは魂をふきこまなければならない。それが「オリジナリティー」。本書で著者はさらに「オリジナリティーとは何か」を論じ、それがヒットへの最大のカギとものであるから「パクリ論争などバカバカしい」と述べる。「一流のアーティストであれば元ネタを引用し、解釈して新しいものを作っていく手法にこそオリジナリティーが発揮される」ものなのだ。
過去には有名なヒット曲のサビがクラシックの曲に似ているなどという指摘もあったから、キリがないともいえる。
「バカバカしい」ことではあっても、あの曲は昔のあの曲に似てると考えたり、ひそひそやるのは、聴く側の楽しみでもある。本書を読めば「違い」を見分ける楽しみが増えるかもしれない。
本書ではほかに、AKB48やももいろクローバーZの違いを論じ、「ジャニーズ事務所はディズニーランドである」という仮説を立てるなど、アイドルについてもさまざま角度から「分析・分解」を試みて、売れる仕組みを探っている。
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