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秘境駅の謎

 「秘湯」は人気だが、こちらの「秘」はどうだろうか。本書『秘境駅の謎 なぜそこに駅がある!?』(発行:天夢人 、発売:山と渓谷社)。タイトルにもあるように、日本のあちこちにひっそりと存在する、ほとんど乗降客がいない寂しい駅のガイド本だ。

 カラー写真も豊富で、地図も丁寧、解説も詳しい。そこに何もないことがわかっていても、この本を片手にちょっと訪ねてみたいという気分にはなる。鉄道オタクでなくても、存分に楽しめる本だ。

10人の筆者が手分けして書く

 「誰も来ない、何もない、列車だけがやってくる。めっちゃ小さな駅に降りる旅」というのが本書のコンセプト。雑誌『旅と鉄道』で2012年から17年にかけて4回にわたって特集し、好評だった記事を再編集して単行本にした。

 巻頭部分を書いているのは自称「秘境駅訪問家」の牛山隆信さん。これまでに500駅余りを訪れた「秘境駅探訪パイオニア」だ。HP「秘境駅に行こう!」をつくり、人里離れた辺地にある駅の取材記を掲載している。『秘境駅へ行こう!』『いま行っておきたい秘境駅』『秘境駅跡探訪』など「秘境駅」の本を何冊も出している。

 本書は牛山さんら10人の筆者が手分けして書いている。このほか写真撮影や資料提供で8人が協力している。「第一章 飯田線大研究」「第二章 いまこそ行くべき秘境駅」「第三章 秘境駅の旅に出よう」の三部構成。全国各地の秘境路線や秘境駅がたっぷり紹介されている。西日本の秘境駅についても詳しい。

ロープ一本で断崖を下る

 さまざまな現地ルポの中でとくに面白かったのは「小幌駅の6時間35分」だ。伊藤桃さんという、JR全線完乗ずみの「鉄道アイドル」が日本一の秘境駅といわれる北海道の小幌駅を訪ねた報告記だ。

 山のトンネルとトンネルの間にポツンと駅がある。向かい側は海。朝8時38分、一両編成の車両から降りたのは伊藤さんたちだけだ。次に列車が来るのは15時13分。周囲に人家はない。有り余る時間。伊藤さんは海に降りる道を見つけ、ロープ一本で断崖を下ったりしながら海浜に出る。洞窟に祀られている観音様に手を合わせる。足元にとつぜんヘビが出現したときは思わず「わっ」と声を上げた。ちょっとした探検である。

 そのほかの執筆者たちも、いずれも秘境駅オタクや地図研究家だから、内容が濃い。「秘境駅に行きたしと思えども、秘境駅はあまりに遠し・・・」と思いがちだが、東京や横浜の「秘境駅」も紹介されているので、行ってみたくなる。本欄で紹介してきた『世界の断崖 おどろきの絶景建築』、『世界「奇景」探索百科』、『秘島図鑑』などと同じく、手元に置いて、空想旅行するだけでも気分転換になる本だ。

  • 書名 秘境駅の謎
  • サブタイトルなぜそこに駅がある!?
  • 監修・編集・著者名「旅と鉄道」編集部 (編集)
  • 出版社名天夢人(発行) 、山と渓谷社(発売)
  • 出版年月日2018年3月18日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数A5判・176ページ
  • ISBN9784635820424

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