本書『僕はまた、君にさよならの数を見る』(2016年)は、株式会社KADOKAWAが刊行するライト文芸系文庫レーベルの「富士見L文庫」の一冊。「富士見L文庫」は「大人のためのキャラクター小説」をキャッチコピーに掲げている。
僕・佐々木直斗と彼女・峯原美雨の出会いは、桜の花が美しい、春の一日のことだった。「開けた視界に、桜の花。桜は池へと枝を伸ばして、揺れる水面に淡紅色が躍る。そんな景色を背景に、少女が一人、佇んでいた」。その時僕の頭に「まるで硝子細工のようだ」という言葉が浮かぶほど、彼女は儚く美しかった。
「この公園のボートにカップルで乗ると、そのカップルは別れてしまうっていう都市伝説...ご存知でしたか?私、検証したいんです」と突然美雨が話しかけた。美雨の勢いに押されるまま、直斗は美雨と1度きりの恋人としてのお付き合いをして、カップルとしてボートに乗ることになる。
直斗には、人生の残り時間が少なくなった人に触れると、その残り時間が「数字」として目に見えるという不思議な力がある。ボートを降りる際、直斗の差し出した手が美雨の手に触れた瞬間、直斗は美雨の頭上に浮かび上がる「300」という数字を見た。数字は300日から徐々に減っていき、0日=死へのカウントダウンの形で物語は進んでいく。
直斗と美雨は、偶然にも同じ大学の医学部の学生だった。美雨は、「亡くなった父親が患っていた、難病の治療法を見つけたい」と医者になる夢とともに、「いつか、私が書いた物語を、たくさんの人に読んでもらいたい」と小説家になる夢を打ち明けた。
直斗と美雨のピュアな恋仲が淡々と描かれているが、物語の中盤、美雨は20歳の誕生日に突然倒れる。死を予見することはできても、防ぐことはできない直斗は、美雨の夢が叶うことはないと知りながら、彼女の夢を応援することが正しいのかどうか、分からなくなる。
直斗は別れまでの日数が見えることで思い悩むが、逆に、大切な人との別れの時期を予め知ることができたら、限られた時間をその人のために最大限に使うことができるから、羨ましい能力だと思う。
同文庫の公式サイトには、本書の著者・霧友正規の作品特集ページが設けられている。それによると、ファンタジア大賞ラノベ文芸賞受賞作を改稿・改題した『見えない彼女の探しもの』でデビュー。他に『出雲新聞編集局日報かみさま新聞、増刷中。』(ともに富士見L文庫)シリーズなどがある。
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