本を知る。本で知る。

自分の頭でとことん考えてみよう!

 この本で出色なのは、“アナロジー(類推)”に関する記述。いろいろなものに応用できる。記憶の蓄え方や、その記憶のとり出し方、果ては、蓄積した記憶と実際の現象との比較のために、この手法は欠かせない。

著者は認知心理学者。認知科学は、もともとは人工知能の研究からスタートしている。人間の知性や知能をいかに人工的に生み出すことができるか。それは人間の行動研究へと発展し、行動心理学を取り込むことになる。それが著者の研究している認知心理学という学問だ。

では、入りやすいところから。1つ、2つ。みなさんも受験生時代は、英単語や歴史など覚えることだらけで、苦しんだことでしょう。当たり前なのだけれど、記憶を定着させるためには、反復、繰り返しが重要。さらにはいろいろなキーワードと関連付ける、いろいろな場所、味覚や触覚など五感と関連付けるとさらに記憶はたしかになる。たとえば、海辺で勉強すると、潮風の匂いをかいだり、砂に触れたりする。その感覚は勉強内容に付随した情報として脳にインプットされるので、潮の香りをかいだだけで、英単語を思い出したり、源頼朝を思い出したりするわけだ。勘のいい人はもうおわかりだろうけど、記憶にさまざまな取っ手がくっつくということだ。だから、どれかの取っ手を探し当てられれば、記憶を取りだせる。取っ手が多ければ、多いほど、とり出しやすくなる。

そうした過去の記憶の蓄積は、現在の知識や現象とのアナロジーにも使える。昨年売れた、ちきりんの著書のなかにも、そうした事例はあったよね。アイデア本の古典ともいえる『アイデアのつくり方』には、既成の事柄の組み合わせからアイデアは生まれるという記述があるけれども、アナロジーはその手法にも通じる。

この本の冒頭に登場する、ダイソンの例は、まさにそれ、ダイソンが登場する前の掃除機は、すべて排気によって塵を巻き上げていたわけだけれど、それを解消する手段をダイソンは考えた。ある事象とある事象を組み合わせる。あるいは過去の事象と現在の事象を照らし合わせてみる(アナロジーだね)。そうすることで、新しいものが生まれる。つまりはイノベーションが誕生するというわけだ。著者は、それをスマート・シンキングと呼んでいる。さあ、明日からあなたもスマート・シンキング!    

書名:スマート・シンキング 記憶の質を高め、必要なときにとり出す思考の技術
著者:アート・マークマン
訳者:早川麻百合
発売日:2013/3/1
定価:1,785円(税込)

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