戦略PRはご存知? 一時期もてはやされ、まさに「仕掛けて売る」の最前線の手法であった。端的にいえば、消費者の知らない事実を世に知らしめ、教育することによって、ターゲットの商品が重要である、必要であると認識してもらう手法である。
しかし、世の中そんなに甘くはなかった。派手な成功例ばかりが取りざたされ、こぞって、これからは戦略PRだと巷間言われてきたが、いわれるほどにはうまくいかなかった。結果この手法は、難しすぎると認めざるをえなくなった。
そこへ出てきたのが、これ。「ムーブメント・マーケティング」だ。消費者を強引に導こうという壮大なプランは捨てて、すでにいまここにある、ムーブメントを利用しようというものだ。ゼロからのスタートでない分、それは比較的容易にマーケティングプランを練られる。いまソーシャルメディアが急速に発展し、ムーブメントは、ゲリラ的にそっちにもこっちにも発生しているし、一部には非常に大きなうねりとなって、拡大しているものもある。それを利用しない手はない。
おやっと思わせられた事例がこの本のなかにはあった。アシックスのオニツカタイガーだ。大ブレークしたわけだけれど、著者グッドソンの会社が仕掛けたものだ。「日本レトロブーム」をヨーロッパで仕掛けたと紹介されている。一時期そのレトロブームに乗って、オニツカタイガーは、各メディアでとり上げられていた。昔なつかし、郷愁を誘うブランドで、年輩者がまず反応し、その後若い世代が注目した。
上記はムーブメント・マーケティングの一成功例にすぎないが、ほかにも成功例は数々ある。本書では、その事例や、いまある実際のムーブメントの紹介、仕掛け方、注意点など細部にわたって、この新しいマーケティング手法を手繰り寄せていく。ただしひとつ留意しなければならないのは、この手法はまだ始まったばかりだということだ。これから皆さんが新たに取り組んでいくことで、ムーブメント・マーケティングは発展・完成していくことになる。この本でぜひヒントをつかんでビジネスにつなげてほしい。
※ここでいうムーブメントとは、政治的、社会的、文化的な運動や活動を指す。
書名:ムーブメント・マーケティング 「社会現象」の使い方
著者:スコット・グッドソン
訳者:山田美明
発売日:2013/3/1
定価:1,890円(税込)