自分の子供が、いじめの当事者だった。
親がとるべき「正しい対応」とは、果たして何なのか――?
KADOKAWAから発売された『娘がいじめをしていました』(著者:しろやぎ秋吾)は、いじめ問題を被害者のみならず加害者の視点からも描いた、意欲的セミフィクション。
本作は「シリーズ立ち行かないわたしたち」の第3弾。「シリーズ立ち行かないわたしたち」とは、思いもよらない出来事を経験したり困難に直面したりと、ままならない人生を描くコミックエッセイの新シリーズだ。
赤木家は、妻・加奈子、夫・祐介、小学5年生の娘・愛(まな)の3人暮らし。
ある日、夫婦でテレビを観ていたら、愛と同じ11歳の子供がいじめを苦に転落死した――というニュースが流れた。「(いじめっ子の)親は何してんのかね」「オレだったら絶対許さんけどね 人をいじめるなんてこと」と祐介は憤った。
「大人の見えないところでやってるのよ なかなか気づけないよ」と言う加奈子に、「気づくでしょ だって自分の子供のことだよ」と祐介は自信満々。どこからこの自信がわいてくるのか......。加奈子は半ば呆れてしまう。
学年が上がるにつれて、愛の学校での人間関係がわからなくなっていく。低学年の頃に仲が良かった小春ちゃんとは、近頃遊んでいないらしい。それだけ手がかからなくなったということで、親があまり首を突っ込むのも良くないと思い、積極的に探ることはしてこなかった。今はもう、知らないことだらけだ。かすかな不安を覚えた加奈子は、愛に聞いてみる。
「ねぇ 学校でいじめなんてないよね?」
「ないけど なんで?」
「ちょっとニュース見て気になって」
「みんな仲良いよ うちのクラス」
良かった......。そうだ。あるわけがない。いじめに関わるなんて、うちの子に限って――。
しばらく経った頃、加奈子の携帯に小春ちゃんの母親から電話がかかってきた。「なんだろ...」と思いながら出ると、愛が小春ちゃんをいじめている、今日は怪我までさせられて帰ってきた、という信じがたいことを言われた。
話が急すぎて、頭が追いつかない。「申し訳ございません...」と反射的に謝り、加奈子は電話を切った。「愛が小春ちゃんをいじめてるって...ありえないでしょ...ないない」。愛からも話を聞いてみないことには、わからないではないか。
加奈子は自分を落ち着かせつつ、「どうだった学校?」と聞いてみた。愛はこちらを振り向きもせず、ゲームをやりながら「別に...いつも通りだよ」と返してくる。「いつも通りって何よ」「ママの方こそ何よ」......きりがなさそうなので、加奈子は一歩踏み込んで聞き直す。
「あんた今日 小春ちゃんと何かあった?」
「別に 何もないよ」
「そっか」
たぶん、愛は嘘をついている。小春ちゃんの母親から電話がかかってきたのだから、「何もない」ことはないだろう。冷静に考えると、いじめの加害者が「はい いじめてます」などと言うわけがない。
もし本当だったらどうしよう。実は加奈子には、学生の時にいじめられた経験がある。もし友達をいじめて怪我までさせた後に、あんな無邪気な笑顔で堂々と嘘をついていたとしたら。「コワ...気持ち悪...」。許せないし、冷静に話ができないかもしれない。そして、その不安は見事に的中した。
我が子への不信感、夫との意見の相違、SNSで巻き起こる炎上......。様々な問題に翻弄される2つの家族。著者のしろやぎ秋吾さんは、「自分が親としてそういう立場になったとき、果たして子供のことを全て信じることができるだろうかという思いで描きました」とあとがきに書いている。
近年、いじめの認知件数は増加傾向にあるという。我が子がいじめの被害者になった時、加害者になった時、親はどうしたらいいのか、自分だったらどうするだろうかと、考えるきっかけをくれる作品。
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