2023年12月11日、山本淳子さんの新著『道長ものがたり 「我が世の望月」とは何だったのか――』(朝日新聞出版)が発売された。
山本さんは、『源氏物語の時代』『枕草子のたくらみ』など古典ベストセラーシリーズの著者で、平安文学を面白くかつわかりやすくひもといてくれると、古典ファンの間で人気を得ている。
本書では、最新の研究成果をもとに、最高権力者・藤原道長の生活者としての知られざる素顔をピックアップ。紫式部は道長の妾だったのか? 『紫式部日記』『紫式部集』など、当事者たちが残した史料を新たな視点で分析し、二人の男女関係を鮮やかに解き明かしている。
一家の末っ子として生まれた道長が天下人になれたのは、兄たちを襲った立て続けの死や、政治的ライバルの自滅があったから。しかし、死者や敗者、つまり他人の不幸を踏み台にしたために、道長はしばしば怨霊に取り憑かれ、病に伏すことになったという。いきなり「怨霊」と言われると戸惑ってしまうが、山本さんは「それを非科学的と嗤っては道長の心を覗けない」と釘をさしている。
また、道長といえば、研究者や古典ファンの間で、しばしば議論の的になるのが、紫式部との関係について。著者は、紫式部自身の記述から、そのプライドと、匂い立つような女心を分析している。
さらに、道長のおごりの象徴とされる「此の世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたる事も 無しと思へば」という有名な一句の定説に異議を唱え、新たな解釈を提示している。
冷徹で不遜なイメージの強い道長の、政治史からは捉えられない、生活者としての新たな顔を捉える。歴史ファン、源氏ファンだけでなく、大河ドラマ『光る君へ』を見る予定の人にもおすすめの1冊だ。
<もくじ>
第一章 超常的「幸ひ」の人・道長
第二章 道長は「棚から牡丹餅」か?
第三章 〈疫〉という僥倖
第四章 中関白家の自滅...
第五章 栄華と恐怖
第六章 怨霊あらわる
第七章 『源氏物語』登場
第八章 産声
第九章 紫式部「御堂関白道長の妾?」
第十章 主張する女たち
第十一章 最後の闘い
第十二章 「我が世の望月」
第十三章 雲隠れ
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