2009年に『ほかならぬ人へ』で第142回直木賞を受賞した作家の白石一文さん。デビューから一貫して、世界の構造や人間の営みをテーマに作品を発表し続けてきた。
直木賞受賞から14年。ふたたび、男女の恋愛を中心に据えた作品を執筆した。折り重なる出会いの神秘が描かれる。
2023年10月12日『かさなりあう人へ』(祥伝社)が発売された。
【あらすじ】
スーパーの人気商品を盗んだ野々宮志乃が、万引きGメンから声をかけられる。志乃はとっさに店の駐輪場にいた箱根勇に「あなた」と夫かのように呼び掛ける。勇は反射的に夫婦を装って志乃を助ける。
夫に先立たれた40代販売員の志乃と、不倫が原因で離婚した50代会社員の勇の物語が始まる。
特設サイトには、著者インタビューが掲載されている。
白石さんは、40代の女性と50代の男性を主人公にした理由を「恋愛と結婚がイコールではないように描くため」と説明している。まっすぐな純愛を描いた『ほかならぬ人へ』から14年経ち、男女の関係も大きく変わった。SNSが普及し、だれかとゆるくつながっていられる今では、孤独を動機とした恋愛が「至上命題」ではなくなった、と白石さんは指摘する。だからこそ、「恋愛がメインストリームでなくなった現代において、あえて恋愛小説を成立させようとしたら、どんなことが起きるのか」というむずかしいテーマに挑んだという。
書きながら、「恋愛は40歳を過ぎてからするものだという思いを強くした」という白石さんが、「ある程度人生経験を積み、年を重ねた読者にぜひ読んでもらいたい」と言う本作。恋愛小説が好きな人はもちろん、最近、生身の人とつながることに臆病になっている方にもおすすめの作品だ。
■白石一文さんプロフィール
しらいし・かずふみ/1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋勤務を経て、2000年『一瞬の光』でデビュー。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で第22回山本周五郎賞を、10年『ほかならぬ人へ』で第142回直木賞を受賞。他の著作に『道』『松雪先生は空を飛んだ』『投身』など多数。
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