「正しい中年を目指します。」
もう〇歳かと、これまでも節目節目に年齢の重みを感じてきた。しかし40歳になったときの感慨深さは、それらの比ではなかった。正直、40という数字に心が追いつかず、戸惑っている。同世代の人たちは、年をとることをどう受けとめ、どう折り合いをつけているのだろうか......。
そんなもやもやを吹き飛ばしてくれたのが、柘植文(つげ・あや)さんが「中年」と「老い」をテーマに描いたコミックエッセイ「中年女子画報」シリーズ(竹書房)だ。柘植さんは現在50歳、独身ひとり暮らし。40歳で「中年」を自覚して以来、「正しい中高年」を模索し続けている。その模索の仕方も、テンポのいいセルフボケツッコミも、元気が湧いてくる面白さだ。
「中年女子画報」シリーズは、2015年1月から2023年7月までに5冊が刊行されている。1冊目は40歳からはじまり、2冊目は42歳から44歳、3冊目は44歳から46歳、4冊目は46歳から48歳、最新刊は48歳から50歳までを描いている。
1 『中年女子画報』(2015年)
40歳になって急に自覚した「中年」。若いころの延長でこれまで生きてきたけど、このままでいいの? そんな疑問を胸に、中高年のトレンドである山や絵手紙にトライしたり、おばちゃんの聖地・大阪でおばちゃんの生態を観察したり、水着になったり全裸になったりしながら、「正しい中高年」を模索していく――。
ある日、一般中高年女性について学ぶべく、女性誌を買い込んで研究することにした柘植さん。50代向けはそこまで年齢を押し出してこないのに対し、40代向けは「『40代』ってことをすごく主張してくる!」ことを発見した。
きっと40歳で急に中年になってしまったことにあたふたして「お前はもう40代中年女だぞ!」と自分に言い聞かせているのだ、それが40代も後半になるとガラっとおちついてとにかく「上質」になるのだ、と考察している。
「ステキな中高年になるには 40であたふたしてるうちに 50で『上質を知る私』みたいにならないといけないようなので なんとかやっていこうと思います そんな姿を見せるマンガです」
2 『中年女子画報 ~44年目の春~』(2017年)
44歳になって中年であることを受け入れられるようになったものの、素敵に年をとるにはどうしたらいいのかがわからない柘植さん。おひとりさま海水浴で夏を満喫したり、香水をまとって加齢臭対策をしたり、ありあまる母性を牛に注いだり。悩みながら焦りながら、「花盛りの中年期」を楽しんでいる。
「わかるー 40すぎたら『死ぬ前にやっとかなきゃ感』出るよねー」
3 『中年女子画報 ~46歳の解放~』(2019年)
40歳のときは自分が中年であることに戸惑っていて、44歳で受け入れたつもりが、心はまだ揺れ動いていた。そして46歳になって100パーセント受け入れ、中年が板についてきた柘植さん。人生の折り返しで「色々やっとかなきゃ感」が増してきて、味のある中年男子をウォッチングしたり、シシを解体したり、初めてストリップ観覧したり......?
「自分の老いている部分を実感すると、自分の若い部分がとても貴重に思えますね。」
4 『中年女子画報 ~ためらいの48歳~』(2021年)
あっという間に50代が見えてきた。開園して間もないムーミンのテーマパークに行って北欧気分に浸ったり、人間ドックで胃カメラを堪能したり、銀座でアーバンライフを疑似体験したり。柘植さんの模索はまだまだ続く。
「(評者注:テーマパークのオシャレ園内図を見て)もう少し案内とかーわかりやすくするといいんじゃないかなーとかー 理解力のおとろえた中年はオシャレから情報を読みとるの難しいの...」
5 『中年女子画報 ~50歳ですよ~』(2023年)
そしていよいよ50代に突入。コロナ禍で外出できなくなったり、骨董も若者も愛でたくなったり、初めて宝塚に行ってみたり。「正しい中高年」の模索を続ける一方、心も生活もだんだん変化してきているようで......?
「シリーズの5冊目ですが、どこから読んでも問題ありませんので、お好きな巻からお読みくださいませね。伏線とかありませんからね。」
40歳になったときのあの戸惑いは、きっと誰もが通る道なのだろう。戸惑いを出発点に、あれこれ試みながら「今」を最大限に楽しんでいる柘植さんを見て、40代の心の持ち方のヒントにしたいと思った。
■柘植文さんプロフィール
つげ・あや/1973年東京都出身。1999年商業誌デビュー。著書に、ドラマ化された『野田ともうします。』『幸子、生きてます』『むか~しむかしの』『喫茶アネモネ』など。
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