38歳、一人暮らし。
最近よく夢を見るようになった。そこには、ずっと昔に亡くなった「さきちゃん」も出てきて――。
イラストレーター・ながしまひろみさんのコミック『わたしの夢が覚めるまで』(KADOKAWA)は、眠れない夜に読むと心が軽くなる、ちょっと不思議な「夢」の話。
38歳、一人暮らし、会社員の「その」。近頃は眠りが浅く、夜中の3時ぴったりに目が覚めるようになった。「故人の夢」「ピアノを弾く夢」「空を飛ぶ夢」......浅い眠りの中で見たさまざまな夢。そこに出てくる人たちの言葉は、何かの暗示なのだろうか?
「その」は東京で一人暮らしをしている。38歳の誕生日を迎え、「年々ふつうの日になっていくな」と感じていた。マンションも恋人もほしい。でも、もし1つだけ願いが叶うなら「ピアノ弾けるようになりたい」と思っている。
小さい頃から眠ることが好きで、夢もあまり見ないほうだった。それが最近、どうしても夜中の3時に目が覚めてしまう。そして二度寝するまでの間、浅い眠りの中で見た夢をうとうとと思い出すことが日課になっていた。
「その」が小さい頃、母の妹の「さきちゃん」が死んだ。38歳だった。「その」は「さきちゃん」のことが大好きだった。あこがれていた「都会で働くおばさん」は、「若くして死んだおばさん」になった。
最近よく「さきちゃん」が夢に出てくる。ある日の夢では、木々に囲まれた公園のようなところで、ベンチに座って一緒におしゃべりをした。またある日の夢では、今まで出会った人たちと大型バスでどこかへ向かう途中、車窓から「さきちゃん」が道で手を振っている姿が見えた。
「死んだ人が出てくる夢ってどういう意味なんだろう」と「その」は思う。何か意味があるのか、ないのか......。
そんなある日、親友の「とも」から「わたし地元に帰るかも」と知らされる。少し前に、相合い傘をして歩いている夢を見たばかりだったのに。「とも」と離れ離れになる現実を目の当たりにして、「その」はショックを受ける。
「その」は不眠の相談に訪れたクリニックで、夢にはその人の「不安と願望」が表れるという話を聞く。実際、誕生日にはステージ上で観客から「誕生日おめでとう」と拍手される夢、生理痛がつらいときは重力のない世界で空を飛ぶ夢、同僚から飼っている猫の話を聞いたときはオオサンショウウオの夢を見た。
では、「さきちゃん」が出てくる夢は、どんな「不安と願望」の表れなのだろうか......。
そんなある日、実家から「さきちゃん」の27回忌法要を知らせる手紙が届く。両親も年なので、今回で最後の法要にするという。「だから夢に出てきたのかな~ 全然こわくないけど」と、「その」は納得した。
その夜、またもや「さきちゃん」が夢に出てきた。にぎやかな宴会の席で、「さきちゃん」は酔っぱらっていて、「その」が知らなかったある事実を笑顔で告げた――。
38歳になった「その」と、38歳で亡くなった「さきちゃん」。ふたりは「その」の夢の中で、たびたび言葉を交わす。現実に、「さきちゃん」が「その」の隣にいるような感覚になってくる。切なくて泣けるのと同時に、心があたたまる。「眠れない夜の処方箋」のような、新感覚の作品だ。
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