ダンナさんはパニック症に、長男はいじめ加害者(?)に、そして次男は不登校に――。「大原さんち」はなぜ、次々とトラブルに見舞われるのだろう。
2023年9月8日に発売された大原由軌子さんの実録マンガ『大原さんちの不登校』(文藝春秋)では、次男が中学時代、不登校になった時の「怒涛の日々」を漫画化した作品だ。
中学時代は「陰キャの極み」で美術系の高校に進学、20代後半に新宿2丁目のオカマバーで「ダンナさん」と出会い、スピード婚をした大原さん。当時、ダンナさんはパニック障害を発症して無職。大原さんは長男出産後に漫画家デビューを果たした。その長男・タケは小学校5年生の時に「いじめ加害者」として訴えられるという事件を起こしている。
そんなトラブル多めな家族に囲まれながらも、次男のレイは新生児のころから情緒が安定した子で、家族の中で唯一の理系脳の持ち主。頑固な職人気質でありながら協調性を併せ持つ、「フツーの極み」として中学に入学した。
人間関係のトラブルをほとんど経験したことのなかったレイだったが、1年生の夏休み前から様子がおかしくなった。朝、起きられない、食欲がない、遅刻が多い。やがて、クレジットカードの無断使用が発覚。レイがオンラインゲームに課金していたのだ。体調不良も明け方までゲームをしていたことが原因だった。
何度取り上げても、探し出しては親に隠れてゲームをするレイ。ついに、自分の力ではやめられなくなってしまったと両親にSOSを出す。
大原さんが話を聞くと、レイはオンラインゲームにはまった経緯を打ち明ける。そして、オンラインならではの独特のマナーや複雑な人間関係に縛られてしまい、やめるのが容易ではないことも、大原さんにとっては知らないことばかりだった。
学校で出される大量の課題もレイを苦しめていた。次第に同級生の制服に穴を開ける、腕時計を壁に投げつけるなど、問題行動が目立つように。学校や相手の保護者への謝罪に追われる大原さん。レイとともにスクールカウンセリングを受けると、発達障害の疑いを指摘される。
そして2年生の9月、ついにレイは学校に行くことができなくなった。膨大な課題が負担になっていることが不登校の原因と考えた大原さんは、担任のT先生に「発達障害だと診断されたら課題の保留や一部免除などの対応をしてほしい」と直訴する。ところが、レイが学校へ行けなくなった最大の原因を作っていたのは、ほかならぬT先生だったのだ――。
前作の『息子がいじめの加害者に?』は、ネット上で賛否両論を巻き起こした。本作でもおそらく、さまざまな意見が噴出するだろう。そもそもレイが通う中高一貫校を受験したのは本人の意思ではなかったことも、途中で明らかになる。
「どうしてもっと子どものことばを聞いてやらなかったのか」と批判するのは簡単だが、自分が大原さんの立場だったら、どう判断し、行動していただろうと考えてしまう。ただ、本作を読むと、子どもには大人とは違う世界が見えていること、大人の事情を彼らなりに理解していること、そして、子どもっぽく見える行動の裏には必ず理由があるということに気づかされる。
ゲーム中毒や体罰、発達障害など、小中高校生の子どもを持つ親にとって気になる話題が凝縮された本作。スクールカウンセリングや医療機関への相談の仕方、不登校生徒のための学校適応指導教室の様子なども詳しく描かれている。理由は人それぞれでも、わが子の不登校にどう対応すべきか悩んでいる親御さんの参考になるはずだ。
■大原由軌子さんプロフィール
おおはら・ゆきこ/1970年生まれ。長崎県佐世保市出身。美術系短大卒業後、グラフィックデザイナーとして14年間、都内に勤務。2006年、パニック障害+神経症持ちの夫との日々を描いた『大原さんちのダンナさん このごろ少し神経症』でデビュー。著書に『お父さんは神経症』、『京都ゲイタン物語』、『大原さんちの2才児をあまくみてました』、『大原さんちの食う・寝る・ココロ』、『息子がいじめの加害者に? 大原さんちの大ピンチ』などがある。2012年より「まぐまぐ!」からメールマガジン「大原さんちの九州ダイナミック」を週刊で配信中。
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