日々パーソナリティの話を盛り上げているラジオの構成作家は、どんなコミュニケーション術を持っているのだろうか? 『一番「伝わる」会話のコツ だから僕は、しゃべらない』(KADOKAWA)は、『国分太一 Radio Box』、『Snow Manの素のまんま』などの構成作家・永田篤さんが、自分はしゃべらないで相手に楽しくしゃべってもらうコツを紹介した一冊だ。
前回は本書から、相手の話が盛り上がる質問の考え方をお伝えした。今回は、コミュニケーションがうまくいく"最強の一言"を3つご紹介しよう。
たくさんの初心者パーソナリティを相手に、番組を作ってきた永田さん。相手の緊張をほぐしたい時にかける言葉は、「緊張してます?」なのだそうだ。緊張していることを一度認めると、ラクになりやすいのだという。
ポイントは「緊張しないで!」ではなく、問いかけること。つまり、自分を客観視するきっかけをつくってあげるのです。すると相手は視界がぐっと広がり、気持ちをニュートラルな状態に戻すことができます。
本書では、実際に初めてのラジオの前にガチガチになっていたコンビ芸人のエピソードを紹介している。打ち合わせを終えて雑談をしている時に、永田さんが「もしかして、緊張してます?」と聞いてみたところ、ツッコミ担当の「そうですね......」という返事にボケ担当が「何言ってんだよ! チャンスだぞ!」と言い返し、漫才のような言い合いが始まったという。そこから緊張がほぐれ、ラジオは楽しく盛り上がったそう。初対面の人と話す時などにも使えそうだ。
永田さんの口ぐせの一つが「いい感じ」。人に何かをまかせる時によく使うそうだ。具体的には、番組収録の後で編集作業をするディレクターに「いい感じに編集お願いします」、年下の作家に作業をお願いする時に「いい感じにおまかせします」など。
「編集お願いします」「おまかせします」だと、相手に丸投げしているようで「とても冷たい表現」のように感じるのだそう。そこで「いい感じ」をつけると、「ガッチガチに厳しく追求しないものの、少し上を意識するニュアンス」が付け加わる。やわらかい表現で、頼む側の期待を伝えることができるのだ。
また、人にまかせる時以外でも、たとえば他の人がまだ仕事をしているのに先に帰る時にも使っているという。若手が帰りづらくならないよういつも早めに帰っているそうだが、定番の一言が「いい感じに帰ります」だ。
少し意味が分かりませんが、ただ「帰ります」と伝えるよりも、ちょっと言葉をつけ加えるだけで、なんか優しい印象になりませんか?
このような、はっきりとした意味はないがやわらかい印象のお決まりフレーズを一つ持っておくと、いつでも場をなごませることができそうだ。
もう一つ、永田さんがよく使うフレーズが「どーでもいい話なんですが」。こちらも自身では単なる口ぐせと思っているそうだが、本書の編集者いわく「最強の前置き」だそう。なぜなら、どんな話が続いてもウケるからだ。実際に相手にとってどうでもいい話なら「本当どーでもいいですね」と笑ってもらえるし、どうでもいいと言いつつ大きなことを話せば「めちゃめちゃ重要じゃないですか」と盛り上がってもらえる。
またこの前置きをすれば、話す側にとっても会話のハードルが下がる。特に永田さんのような裏方の職業だと「自分のことをペラペラしゃべるなんて、本来必要のないこと」だが、人と仕事をする上では自分について知ってもらうことも重要だ。そこで、一見相手に必要のなさそうな自分の話を聞いてもらう時に、「どーでもいい話なんですが」が免罪符として役立つのだそうだ。
『一番「伝わる」会話のコツ だから僕は、しゃべらない』ではこのほか、日常に役立つさまざまなコミュニケーション術を、ラジオ番組作りの裏側をまじえながら学ぶことができる。
【目次】
オープニング トーク上手はあきらめよう
第1章 「しゃべらない」という心構え
第2章 「場」をつくり、盛り上げる
第3章 「相手」にしゃべらせる話題づくり
第4章 「気遣い」で心をつかむ
第5章 話術より「段取り術」で信頼を得る
第6章 気持ちが楽になる「考え方」
エンディング コミュニケーションを仕事にした僕が、今しゃべりたいこと
■永田篤さんプロフィール
ながた・あつし/三重県出身。東京都在住。小学6年生頃からラジオを聴き始める。大学では放送研究会に所属。構成作家として、『国分太一 Radio Box』、『KちゃんNEWS』、『Kis-My-Ft2 キスマイRadio』、『Snow Manの素のまんま』、『らじらー!サンデー』、過去に、オテンキのりと乃木坂46田村真佑の『レコメン!』、『大竹まこと ゴールデンラジオ!』などの人気番組を担当。パーソナリティやゲストのトークを引き出すことに定評がある。マンガ好き。
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