自分の考えをうまく言えない、言いたいことが伝わらない......。そんな〈ことば〉の悩みを抱える人のための本、『自分の〈ことば〉をつくる あなたにしか語れないことを表現する技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。著者は日本語学者の細川英雄さんだ。2021年に発売され、4万部を突破。最近、帯が新しくなって書店に並んでいる。
SNS、プレゼン、会議、家族や友人とのちょっとした会話でも、私たちは自分の考えを〈ことば〉で伝えている。「〈ことば〉にするのが苦手だ」という人は、日常のさまざまな場面で苦労しているのではないだろうか。
本書では、借り物でない「自分の〈ことば〉」をつくるまでのプロセスを、ロジカルに解説している。「まえがき」によると、大事なのは以下の2つのポイントだ。
・自分の中にあることば(考えていること)をどのようにして自覚するか
・どのようにして他者に伝えることば(表現)にするか
まずは、「自分の中にあることば」を自覚するところから。その中身とは、「あなたにしか語れないこと」=「自分のテーマ」だ。「自分のテーマ」を見つけるには、以下のようなプロセスをたどる。
オリジナリティ
↓
興味・関心
↓
問題関心
↓
問題意識
↓
自分のテーマ
最初の「オリジナリティ」は、突飛なもの、変わったものということではない。「この世界にたった一人の自分」に気づくことだと、細川さんは語る。
生物的な個体差という意味だけではなく、あなた自身の思考と表現の成果として、つまりあなた自身の精神のオリジナリティとして、あなたの存在は、この世で唯一だと言えるのです。それこそが、あなたのオリジナリティであるということもできます。
(本文より)
この「オリジナリティ」から出発して、どのようにして自分だけの〈ことば〉をつむいでいくのだろうか。その場限りの会話術では得られない、本質的な〈ことば〉の力が身につく一冊。
巻末には、解説だけではイメージがわきづらい人のために、ある高校生が自分の〈ことば〉を獲得するまでに悪戦苦闘した体験記を掲載している。
【目次より】
第1章 自分のテーマを発見する
1 自分のテーマとは何か
2 「好き」から問題意識へ
3 「なぜ」を問う意味
第2章 自分のテーマを表現する
1 「内言」をどう「外言」化するか
2 〈私〉をくぐらせる─「自分の問題として捉える」ということ
3 テーマと主張
第3章 自分のテーマで対話する
1 主張と対話
2 自分の主張とは何か
3 社会をつくる個人として
エピソード 自分のことばで語るときまで~千葉くんの挑戦
■細川英雄さんプロフィール
ほそかわ・ひでお/1949年東京生まれ。早稲田大学名誉教授(大学院日本語教育研究科)。博士(教育学)。専門は言語文化教育学。言語文化教育研究所八ヶ岳アカデメイア主宰。ことばと文化の教育をめぐる市民性形成とwell-being (よく生きる)をめざした言語教育の理論と実践について研究。著書に『日本語教育は何をめざすか』(明石書店、2002年)、『「ことばの市民」になる』(ココ出版、2012年)、『対話をデザインする』(ちくま新書、2019年)など、多数。
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