「話し上手になりたい」と多くの人が思っていることだろう。でも、楽しいコミュニケーションをするために重要なのは、前に出ることや積極的にしゃべることだけではないかもしれない。そう言うのは、『国分太一 Radio Box』、『Snow Manの素のまんま』などの人気ラジオ番組を手がけている構成作家の永田篤さんだ。
ラジオの構成作家は「しゃべらない仕事」。生放送中・収録中はもちろん、打ち合わせ中も、パーソナリティのトークを盛り上げることを第一に考え、自分の話はせず、リアクションに徹する。永田さんの著書『一番「伝わる」会話のコツ だから僕は、しゃべらない』（KADOKAWA）は、ラジオ番組作りの裏話をふんだんにまじえながら、「しゃべらない」で場を盛り上げる方法を教えてくれる一冊だ。
相手の話をふくらませるのに重要なことの一つが、質問を投げかけることだ。日々パーソナリティの話をふくらませている構成作家はどんな質問をしているのだろうか？ 本書では、「この前、おいしいランチを食べたんだ」という相手の話を想定して、以下のような質問を挙げている。
1.ランチの情報
「何食べたの？」（料理名）
「どこのお店？」（場所）
「どのへんがおいしかったの？」（感想・特徴）
「高かった？」（値段）
2.相手の情報
「誰と行ったの？」（誰）
「いつ行ったの？」（日時）
「よくランチには行くの？」（頻度）
「ランチにいくらまで出せる？」
「お昼休みに時間が余ったら何してる？」
「行列に何分くらい並べる？」
3.世間の情報
「一時期、ランチ合コン流行っていたよね」
「カラオケ屋さんでランチとかもあるよね」
他にも、「1人ランチ行ける？」という質問から「1人〇〇どこまでできる？」と話を展開できるという例も。脈絡がないように思える質問もあるが、世の中のたいていの会話は他愛のない報告なので、相手の話の腰さえ折らなければどんどん広げていいという。
質問を考える時には、「相手の感情や生活について、分からない部分や、もっと知りたい内容がないかを考えてみるといいですよ」というアドバイスも。さらに、相手が興味を持っていそうな方向の質問ができればより理想的だという。
もしかしたら、頑張って質問をひねり出して「最近、どこか行きましたか？」などと聞いても、「いや、どこにも行ってない」と返されてしまうことがあるかもしれない。このようになかなか話を引き出せない相手には、「YES前提で質問する」といいそうだ。
たとえばある番組の打ち合わせでは、次のような質問を立て続けにしてパーソナリティの記憶を探り、フリートークの内容を決めているという。
「最近、どこか行ってきたんじゃないですか？」
「すごい人に会ったんじゃないですか？」
「すごいもの買ったんじゃないですか？」
「おいしいもの食べたんじゃないですか？」
「何か気づいたことがあったんじゃないですか？」
「～したんじゃないですか？」と聞くと、「そういえばこの前......」と話題が見つかりやすいのだそうだ。相手が消極的な時は、この聞き方をしてみるといいかもしれない。
また永田さんは、伊集院光さんのラジオ番組『深夜の馬鹿力』のフリートークが「ものすごくよくできている」と絶賛している。まずオープニングで「最近気づいたこと！」として一言報告し、そこからフリートークにつなげるという手法だ。気づいたことがタイトルのような役割を果たし、なぜそう気づいたのかが気になってトークへの期待が高まる。もし友達との話題に困ったら、まず「最近気づいたこと」を聞いて、そこから話を広げてみても面白いかもしれない。
次回は『一番「伝わる」会話のコツ だから僕は、しゃべらない』から、いつでも使えて会話がうまくいく一言をご紹介する。
【目次】
オープニング トーク上手はあきらめよう
第1章 「しゃべらない」という心構え
第2章 「場」をつくり、盛り上げる
第3章 「相手」にしゃべらせる話題づくり
第4章 「気遣い」で心をつかむ
第5章 話術より「段取り術」で信頼を得る
第6章 気持ちが楽になる「考え方」
エンディング コミュニケーションを仕事にした僕が、今しゃべりたいこと
■永田篤さんプロフィール
ながた・あつし／三重県出身。東京都在住。小学6年生頃からラジオを聴き始める。大学では放送研究会に所属。構成作家として、『国分太一 Radio Box』、『KちゃんNEWS』、『Kis-My-Ft2 キスマイRadio』、『Snow Manの素のまんま』、『らじらー！サンデー』、過去に、オテンキのりと乃木坂46田村真佑の『レコメン！』、『大竹まこと ゴールデンラジオ！』などの人気番組を担当。パーソナリティやゲストのトークを引き出すことに定評がある。マンガ好き。
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