人の本音を聞き出すことができれば、コミュニケーションや人間関係はぐっとうまくいくはず。相手も知らなかった本音を引き出せば、「私を理解してくれて、何でも話しやすい人だ」と思われるだろう。家族や友人の本音を知れば、すれ違いや衝突をなくすことができ、関係が円滑になる。でも、会話のプロでもないのに、他人の本音を聞き出せる方法などあるのだろうか?
実は、会話のプロでないどころか、"会話が苦手な人でも"実践できる、本音の引き出し方がある。元NHKキャスター・牛窪万里子さんのオリジナルメソッド、その名も「油田掘メソッド」だ。
なぜ会話ベタでもできるのか? それは、ある意味「受け身」の会話術だから。つまりどういうことなのだろうか。『難しい相手もなぜか本音を話し始めるたった2つの法則 入門・油田掘メソッド』(日経BP)で、このメソッドが詳しく解説されている。
「油田掘」は牛窪さん独自の言葉で、「露天掘」と対になる意味をもつ。「露天掘」とは、鉱石を採掘する手法の一つで、地中の坑道を掘らずに、地表から広範囲を掘っていく方法だ。一方で、原油を採掘したいときには、まず地中深くまで井戸を掘る。この二つの採掘法を対比して、牛窪さんは「広く浅く聞く」方法を「露天掘」、「狭く深く聞く」方法を「油田掘」と名づけた。
「露天掘」と「油田掘」それぞれの方法で、たとえば画家にインタビューした場合を見てみよう。
〈「露天掘」の場合〉
質問者「あなたの趣味はなんですか?」
画家「絵を描くことです」
質問者「どんな絵を描いているんですか?」
画家「風景画です」
質問者「何枚くらいの作品になりますか?」
画家「数えたことはないですが、かなりの作品数になります。1万点ほど......」
質問者「絵を描くのは楽しいですか?」
画家「ええ、日常を忘れて絵を描いているときは没頭できますし、何といっても作品が仕上がると、達成感がありますね」
〈「油田掘」の場合〉
質問者「あなたの趣味はなんですか?」
画家「絵を描くことです」
質問者「どんな絵を描いているんですか?」
画家「風景画です」
質問者「風景画とは、主にどんな場所を描くのですか?」
画家「私が描いているのは下町の風景なんです」
質問者「下町の風景......。何か思い出などがあるのですか?」
画家「そうですね、小さい頃、私は下町で育ちましたが、その風景は懐かしく、忘れられないものですね。それを描き残していきたいと思いまして」
質問者「描き残そうと思ったきっかけは?」
画家「街の開発で、懐かしい風景がどんどん変わってしまう様子を見ていて、それを忘れないようにしたいというのが一つ。また昔の街の姿を後世に伝えていけたらと、そんな大きな夢を持って描くようになりました」
「露天掘」に比べて、「油田掘」のやり取りはかなり深い話題にまで行きついていることがわかる。
このように、相手の本音を引き出すことができる「油田掘メソッド」。本音を引き出すなんて難しそう......と思うかもしれないが、実はこのメソッド、会話のセンスも教養もいらない。「油田掘」の基本は、「『オウム返し』を適切に行うこと」だけだからだ。画家インタビューの例をよく読み返してもらうと、質問者がずっと「オウム返し」をしていることがわかるだろう。会話が苦手なあなたも、今「これならできるかも」と思ったのでは?
本書では、「油田掘メソッド」の詳しい実践方法に加えて、相手に合わせた言葉選びができるようになる「LABプロファイル」というメソッドも紹介されている。「油田掘」と「LABプロファイル」を組み合わせれば、効果は無限大だ。
■牛窪万里子(うしくぼ・まりこ)さんプロフィール
大学を卒業後、大手飲料メーカーを経てNHKキャスターに。11年間NHKの報道番組・情報番組を担当した後、フリーアナウンサーとして活動。現在もアナウンサーの他、大手企業を中心にコミュニケーションをテーマとした講演活動を全国で行っている。近著『なぜか好かれる人の「言葉」と「表現」の選び方』(明日香出版社)
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