本を読んでいて、「これって私のこと?」と、ドキリとした経験はないだろうか。「自分と同じ境遇の人もいるんだな」と心強く思うかもしれないし、見透かされているようで怖いと感じるかもしれない。今回は、BOOKウォッチのメンバーが選んだ「どうしてそんなに私のことがわかるの?」と思った本を紹介しよう。
『桐島、部活やめるってよ』『何者』
いわゆる「スクールカースト」に翻弄される高校生たちを描いた『桐島、部活やめるってよ』は、中学生の時に読んだ。当時じわじわと感じていた教室の居心地の悪さは、こういうことだったのか! とすっきり言語化してもらった気分だった。中高一貫校で高校のクラスもほとんど同じ顔ぶれだったが、大人になったからか、スクールカーストはだんだんなくなっていった。
同じく朝井リョウさんが書いた、就活生たちの人間関係がゆがんでいくさまを描いた『何者』を読んだのは、ちょうど推薦入試の準備が始まる時期。私は一般入試組だったので蚊帳の外だったが、指定校推薦の枠を狙って心理戦を繰り広げるクラスメイトたちのヒリヒリした空気感が『何者』と同じだ......と。高校の話を中学で、大学の話を高校で共感しながら読んだ思い出がある。(H)
『+1cm(プラスイッセンチ) たった1cmの差があなたの世界をがらりと変える』
今の人生に「なんとなく満たされていない」と感じる人のための本。「たった1cm、ものの見方を変えるだけで世界が大きく変わる」という信念を元に書かれている。韓国やアメリカで75万部超のベストセラーに。当時16歳だったBTSのジョングクが寝る前に読んでいた本としても話題になった。
「選ばなかったものがよく見えるのは 付き合えなかった初恋の人みたいに 現実ではなく『幻想』の中にいるからではない?」
「『夢』と『叶う』をつなぐのは 『は』や『が』なんて言葉じゃなくて 行動すること、だ。」
こんなふうに視点を1cmずらす方法を、クリエイティブでひねりの利いた言葉と絵で教えてくれる。つい他人と比較してしまうし、あるものよりないものに目が向いてしまうし......自分も「なんとなく満たされていない」人だなと。あぁ、また偏った見方しかできなくなってきたなと自覚したら、そのたびに読んでインプットし直したいと思う一冊。(M)
『野球部あるある』
小・中・高・大と野球部に所属していた身としては、「あれ? 俺の野球人生全部見てた?」というくらい、すべてが当てはまる。ここまでくると面白いを通り越して、もはや恐怖を感じる。本の中に出てくる「男子校と共学の間にある高い壁」については、高校を卒業して10年以上経った今でも、当時を思い出して奥歯をギリギリと噛みしめてしまう。3巻まで発売されており、イッキ読みすると高校球児にタイムスリップできる。(O)
個人で輸入雑貨商を営む井之頭五郎が、仕事の合間に飲食店に立ち寄り食事をとる様を描いたハードボイルド・グルメ漫画。松重豊さん主演のドラマもseason.9まで続いている。 自分も外出先で知らないお店に入り、お昼ご飯を食べることが多く、食べながら味や見た目の感想を脳内ナレーションする気持ちはよくわかる。とはいえ流石にあそこまで語ることはないですけど......。(O)
『冴子の母娘草』
『なんて素敵にジャパネスク』や『海がきこえる』などの作品で知られる氷室冴子さんが、30代半ばのころ、母と一緒にご先祖様のルーツを辿る旅へ出かけた時の珍道中をつづったエッセイ。氷室さんのお母さんは強烈なキャラで、ウチの母など足元にも及ばないが、価値観や思考パターンには大いに通じるものがある。それに怒り、あきれ、反発する氷室さんの語りは、自分の心の声が漏れたのかと思ったほど。初版は1993年だが、2022年に復刊されたのは、いま読んでも新しく、共感できる証拠だ。
2008年に51歳の若さで亡くなった氷室さん。若い世代にはご存じない方も多いと思うが、こんなにかっこいい先輩がいたんだよ、と教えてあげたい。(N)
『人生劇場 青春篇』
1970年代後半の学生時代に、新潮文庫でシリーズ全編を読んだとき、主人公、青成瓢吉が早稲田の学生だったこともあり、なぜか、自分の胸の内を覗き込んでいるような気分で読み耽った記憶がある。
作者の尾崎士郎の経験も投影されているとされるが、大正時代の社会主義運動のうねりに巻き込まれていく主人公と、学生運動の余燼(よじん)がくすぶる当時のキャンパスの雰囲気とも重なって、時代はまったく違うのに同時代のような感覚に包まれた。シリーズ「残侠編」などをクローズアップさせたやくざ映画の印象も強い作品名だが、まさに青春小説として読めた。(S)
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