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太りやすい体質は、3年で変えられる?

体質は3年で変わる

 太りやすい人、やせやすい人。お酒に強い人、弱い人。髪の毛が薄くなる人、ならない人。人の体質はそれぞれ違うが、変えることはできるのだろうか?

 エピジェネティクスの第一人者、中尾光善さんの著書『体質は3年で変わる』(集英社)は、その名の通り、人の体質を3年で変えられるという説を紹介している。エピジェネティクスとは、DNAの塩基配列が変わらなくても、細胞分裂を通して遺伝子のはたらきが制御される仕組みを研究する学問のこと。「3年」という数字も細胞分裂の周期にもとづいているというが、詳しく見てみよう。


 人体にある約37.2兆個の細胞には、分裂して新しい細胞に生まれ変わる「細胞周期」がある。内臓など、一つの組織が丸ごと入れ替わる周期を「ターンオーバー」といい、本書によると、だいたい以下の時間なのだそうだ。

血液中の単球:2日
骨髄:3.2日
大腸・直腸:3.5日
皮膚の表皮細胞:64日

肺:200日
腎臓:270日
肝臓:327日
脂肪組織:2448日(約7年)

心筋:2万5300日(約69年)
脳の神経:3万2850日(約90年)

 心筋や脳の神経などでは一生変わらず同じ細胞というケースもあると言われているが、全身のほとんどの細胞は新しいものに入れ替わり、ターンオーバーはおおむね1000日(約3年)以下だとわかっている。

 遺伝的な要因の体質は新しい細胞に受け継がれるため、変えることは難しいが、生活習慣などが要因の体質なら、新しい細胞になる3年の間に習慣を改善すれば変えられる可能性があるのだ。

 たとえば、アレルギー疾患の治療法に「脱感作(だつかんさ)療法」がある。アレルギーを引き起こす物質=アレルゲンをごく微量ずつ投与することで体を慣れさせ、過敏な反応を弱めていくものだ。スギ花粉の治療によく用いられ、80%前後の患者に有効性が認められている。この脱感作療法は、WHOが3~5年を治療の目安とするよう推奨している。まさに「体質は3年で変わる」例と言える。

 この説を利用すれば、太りづらい体や、病気になりづらい体に変わることも可能かもしれない。本書では、人の体質はどうやって決まるのかというメカニズムの解説をしたのち、変えられるかもしれない体質のヒントを提示している。あなたが悩まされている体質も、3年間の努力でおさらばできるかもしれない。

■目次
まえがき
第1章 そもそも体質とはなにか
第2章 体質は遺伝か環境か
第3章 体質はいつ、どういうしくみで決まるのか
第4章 体質は変わる・変えられる
第5章 体質に潜む健康リスク
あとがき
【付録】体質と遺伝的素因・環境的要因との関係性(表)
主な参考文献

■中尾光善さんプロフィール
なかお・みつよし/1959年福岡県生まれ。熊本大学発生医学研究所細胞医学分野教授。医学博士、小児科医。日本学術会議連携会員、日本医療研究開発機構CREST研究開発代表者およびFORCE研究開発代表者、日本エピジェネティクス研究会代表幹事、発生医学研究所所長を務めた。日本人類遺伝学会学会賞。著書に『あなたと私はどうして違う? 体質と遺伝子のサイエンス』『驚異のエピジェネティクス』(以上、羊土社)、『環境とエピゲノム』(丸善出版)など。



   
 
  • 書名 体質は3年で変わる
  • 監修・編集・著者名中尾 光善 著
  • 出版社名集英社
  • 出版年月日2023年6月16日
  • 定価1,100円(税込)
  • 判型・ページ数新書判・208ページ
  • ISBN9784087212693

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