発達障害やグレーゾーンの特性がある子どもたちへの接し方について書かれた本はたくさんあるが、中でも、実際の教育現場で効果があった対応のスキルを豊富に掲載しているのが、小嶋悠紀さんがまとめた『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル』(講談社)だ。
こだわり行動を終わらせて切り替えてもらうコツ、怒りの爆発を防ぐために最初にかけたほうがいい一言、不安を募らせがちな子との向き合い方......などなど、著者の小嶋さんが教育現場で実践し、効果を実感した100の対応法を解説している。
小嶋さんは元小学校教諭で、現在は発達支援コンサルタントとして活動している。本書では主に教育現場で培われた対応のスキルを解説しているが、そのノウハウはもちろん、家庭でも役立ちそうなものばかりだ。
ここでは、本書の第2章<上手に支援するための「目のつけどころ」と原則>から、発達障害やグレーゾーンの子どもたちに接するときの基本スキル、「ベーシック5」を紹介しよう。
ベーシック5は、もともと倉敷市立短期大学の平山諭教授(故人)が「セロトニン5」として提唱した手法だが、小嶋さんはこれが最も基礎的で不可欠な技術であることを強調するために、あえて「ベーシック5」と改称して紹介している。
小嶋さんによると、発達障害の子に接するときに大切なのは、「安心感を与えること」。ベーシック5は、まさにこの安心感を与えるための接し方だという。
1. 見つめる
2. 微笑む
3. 話しかける
4. 触れる
5. ほめる
まず意識したいのは、子どもが自分のほうを見てきたときに、目を合わせて「見つめ返す」こと。そして、にこやかに「微笑み」つつ子どもに接する。ここでのポイントは、歯を見せて笑うことだという。
「人間の脳は、歯を見せて笑うことで『笑み』を認知できます。歯がポイントですので、そこは外さないようにしてください」
大人から「話しかける」ことも、とても大切だ。小嶋さんは、朝起きたら、すぐに話しかけることを勧めている。
また、「触れる」ことも安心感につながる。子どもが望ましい行動をしていて、その行動をもっとやってほしいときは「タッピング」と呼ばれる方法を試してみよう。ポン、と肩を軽くタッチするか、ポポーンと素早く2回タッチするというやり方だ。
「ただし、頭をなでるのはNGです。発達障害の子は、頭を上からなでられると圧迫感を覚えます。触れたりなでたりするときは、必ず手を横から差し出すようにしましょう」
同時に大切なのが、「ほめる」こと。わかってはいても実践するとなるとなかなか難しそうだが、小嶋さんによれば、さまざまなほめ方の強弱を使い分けることで子どもの脳に与える刺激が変わるのだそう。
「ほめるときには、同時に必ず、身につけてほしい『望ましい行動』や『スキル』を子どもに伝えなければ、十分な支援にはなりません」
これらの「ベーシック5」は、子どもに安心感を与えるための対応として基本の5つとされているが、中でも5番目の「ほめる」は非常に奥が深いとのこと。
そこで、次回はこのほめ方についてより具体的に気をつけるべきポイントや工夫を見ていきたい。
■小嶋悠紀さんプロフィール
こじま・ゆうき/株式会社RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS代表取締役、発達支援コンサルタント、元小学校教諭。信州大学教育学部在学中に発達障害がある人を支援する団体を立ち上げ、代表を務める。卒業後は長野県内で教員を務めながら、特別支援教育の技術などをテーマに全国で講演を実施。県の保育士等キャリアアップ研修や、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の養護教諭むけの研修なども担当する。2023年より現職。直接の指導や支援会議への参加を通じてこれまで2000人をこえる子どもの支援に関わり、センサリーツール「ふみおくん」の開発にも携わった。おもな著作に『発達障がいの子供を教えてほめるトレーニングBOOK』『小嶋悠紀の特別支援教育 究極の指導システム1』(教育技術研究所)などがある。
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