ほとんどのシニア世代が避けては通れない、お金にまつわる不安。この問題にどのように向き合えばいいのだろう。
老いや孤独に対する精神的な不安を解消するヒントが満載の、『老いも孤独もなんのその 「ひとり老後」の知恵袋』(明日香出版社)では、精神科医の保坂隆さんが、老後のシングルライフを巡る精神的な不安を解消しながら、人づきあいやお金、生活習慣などについて豊かに過ごすコツを解説している。
今回は、本書の第3章「今あるお金とうまくつきあっていく」から抜粋し、現役引退後、どうしても不安になる「お金」の問題について大切な考え方をいくつか紹介したい。
豊かな「ひとり老後」を過ごすため、お金に関して大事なポイントの1つめが「ケチ」と「節約」の違いを知っておくこと。
本書では、必要以上にお金を出し惜しむことを「ケチ」、何のために出費を控えるのか目的がはっきりしていることを「節約」としている。とにかくお金を使わないことが目標になってしまうと、それはまさしく「ケチ」と言われても仕方ないだろう。
特に、著者の保坂さんが重要視しているのが、お世話になっている人へのお礼や冠婚葬祭に関する出費など、人とのコミュニケーションに使うお金だ。
「年齢を重ねるにつれて、生活防衛のためだからと貯蓄に励み、だんだんと人づきあいが悪くなる人もいますが、とくにシニアと呼ばれる年代になってからは、それはどうしても避けたいものです」
シニア世代は、人間関係がその後の生活の充実度に直結する年代。たとえお金があっても、ケチだと思われて周囲から孤立することで、寂しい老後になってしまう可能性が高くなるという。
とにかくお金を使わないようにするのではなく、節約するときもそれは何のためなのか目標を明確に持てるようにしたい。
さらに、老後のお金問題で避けては通れないのが、相続に関すること。
「『子供のため』と思って爪に火をともすような生活を送っていても、その思いが子に伝わるとは限りません。また、伝わったとしても、その人がすんなりと遺産を手にできるとは限りません」
そう語る保坂さんが、後輩ドクターから聞いた話として本書に掲載しているのが、その後輩の義父のエピソードだ。
義父はいつも擦り切れたような服を着て、質素というよりも貧しい人だった。しかし、死後に遺品を整理していたら億を越える預貯金が発見された。けれども、娘へ向けた簡素なメモ書きは遺言として成立しなかったため、現在もそのお金をめぐり親戚一同でたいへんな揉め事になってしまっているのだそう。
子供のために自分の豊かな生活を犠牲にすることについて、考えさせられる話だ。むしろお金も時間も自分のために使い切る。そのような心持ちでいたほうが、いきいきと日々を過ごすことにつながり、結果として子供もその姿を見て安心できるかもしれない。
■保坂隆さんプロフィール
ほさか・たかし/1952年山梨県生まれ。保坂サイコオンコロジー・クリニック院長。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、現職。また実際に仏門に入るなど仏教に造詣が深い。著書に『精神科医が教える 心が軽くなる「老後の整理術」』(PHP研究所)、『精神科医が教える 60歳からの人生を楽しむ孤独力』(大和書房)など多数。共著に『あと20年! おだやかに元気に80歳に向かう方法』(明日香出版社)がある。
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