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男だけ入れる天国、寝ると給料が貰える桃源郷...世界中の「天国と地獄」を、英国の地図偏愛家がユーモアたっぷりに語る

地獄遊覧 地獄と天国の想像図・地図・宗教画

 2023年3月3日、地図偏愛家として知られるエドワード・ブルック=ヒッチングさんの新著『地獄遊覧 地獄と天国の想像図・地図・宗教画』(日経ナショナル ジオグラフィック)が発売された。

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 本書は、世界的ベストセラー『世界をまどわせた地図』『愛書狂の本棚』などの著者によるシリーズ最新作。今回、著者が取り上げるのは、「天国と地獄」を描いた宗教画の世界だ。

 キリスト教を中心とした西洋はもちろん、ユダヤ教やイスラム教、インドのヒンドゥー教、北欧神話、メソアメリカの神話、インドから東アジアの仏教、道教などを題材に、世界中の「天国と地獄」をめぐる。

 古代から人類の関心事であり続けてきた「死後の世界」。何が待ち受けて、どう遇され、何を準備すべきなのか。絶対に知ることのできない世界について、人類は想像力を最大限に働かせ、ときに奇抜とも思える世界を表現してきた。

 例えば、中世ヨーロッパで人気だった桃源郷・コケインは次のように描かれている。

コケインでは罪ぶかき大食と怠惰は奨励されるばかりか、生活の基本になっている。労働は禁止で、家は食べ物でできている。丸焼きの豚が、肉を切りとってくださいとばかりにナイフを背負って歩きまわっている。腹が減ると、焼けたガチョウが口に飛びこんでくるし、焼いた魚が川や滝から跳ねあがって足元に落ちてくる。空から雨のように降るのはチーズ、果物の砂糖づけ、バターを塗ったヒバリだ。樹木はバターでできている。修道士は修道院長を打ちまかし、尼僧は喜んでお尻を出す。睡眠には報酬が支払われ、気候はいつも快適で、ワインの雨がやむことはなく、(後略)
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 他にも、善男善女(あるいは善男のみ)が迎えられる至上の楽園、永遠の責め苦を受ける地獄、そのどちらでもない虚無の世界、死者の行先を選別するチンワト橋、悪魔の頭の形をした実がなる木ザックーム、「歯が鳴る館」「ジャガーの館」「刃の館」など順番に6つの試練を受けるマヤの死後の世界など。地域が変われば、天国の様子も地獄の責め苦も変わる。

 これら人類最大の空想を、著者が所有する希少な美術品を含む古今東西の美術や古物で豊富に掲載し、ユーモアを交えて語る。世界中のプライベートコレクションやギャラリーから集めた貴重な図版も多数収録。人類にとっての永遠の謎「死後の世界」についての知的好奇心を満たす1冊だ。

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【主な内容】

第1章 地獄と冥界
古代エジプトのドゥアト/古代メソポタミア――冥府クル/ゾロアスター教の死後の世界――虚偽の家と歌の家/古代インドの地獄/東洋の地獄ほか

第2章 辺獄、煉獄、中間世界
中間世界/辺獄/煉獄

第3章 天国、楽園、理想郷
古代エジプトのアアル/古代インドの天国/東洋の天国/ギリシャとローマ――黄金時代、エリュシオン、幸福諸島/メソアメリカの天国/ジャンナ――イスラム教の楽園/ヴァルハラ/聖書の王国/エデンの園を地図にするほか

■エドワード・ブルック=ヒッチングさんプロフィール
 英国王立地理学協会フェローにして地図偏愛家。BBCの人気クイズ番組「QI」にも携わる。古書店の息子として生まれ、現在もロンドンでほこりまみれのアンティーク地図と古本の山に囲まれて暮らしている。 主な著者に『世界をまどわせた地図』『世界をおどらせた地図』(日経ナショナル ジオグラフィック社)。


※画像提供:日経ナショナル ジオグラフィック

  • 書名 地獄遊覧 地獄と天国の想像図・地図・宗教画
  • 監修・編集・著者名エドワード・ブルック=ヒッチング 著、藤井 留美 訳
  • 出版社名日経ナショナル ジオグラフィック
  • 出版年月日2023年3月 3日
  • 定価3,300円(税込)
  • 判型・ページ数256ページ
  • ISBN9784863135239

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