初売りでつい余計なモノまで買ってしまった、モノが捨てられなくて部屋がなかなか片付かない......思い当たる方も多いのでは?
こうした日常生活で直面しがちな問題を、サクッと解決できそうな「ズルい」学問をご存じだろうか。
それが、行動経済学。
経営コンサルタント、平野敦士カールさんが監修した『ビジネスを思い通りに操る ズルい行動経済学』(宝島社)は、人が無意識におこなっている思考と選択のクセを解明する行動経済学の知見に基づき、ビジネスシーンはもちろん、日常生活でも役立つエッセンスをクイズ形式で面白く解説している。
今回は、「日常生活に使える行動経済学」の中から、「保有効果」と「ハウスマネー効果」を応用する技をそれぞれ紹介しよう。
1つめのケースは、「なかなか部屋が片付かない人にモノを捨てるよう促すには?」。
本書でクイズとして出題されているのは、こんな内容だ。
Bさんの友人から、「部屋が片付かなくて困っている。助けてほしい」とヘルプ要請が来た。実際に訪れると、部屋はモノで溢れている。しかし、いざ片付けを始めると友人は「それはまだ使うから」などと言ってどれも捨てようとしない......これはなぜだろう?
選択肢は次の通り。
1, 自分のモノは価値が高いと感じる心理的な作用があるから
2, どのモノにも、思い出が詰まっているから
3, その友人はケチだから
この問題を解くポイントとなる行動経済学の考え方が、「保有効果」だ。これは、一度自分のものとなった物品や環境の価値を、所有していなかったときよりも高く評価し、手放すのが惜しくなるバイアスのことだという。心当たりがある人も多いのでは。
着ない服を捨てようと思っても、「また着るかも」とクローゼットへ戻してしまうのは、この保有効果のせいなのだ。ただし、保有効果で手放したくなくなるものは、必ずしも思い出が詰まった品とは限らないそう。よって、クイズの正解は1となる。
本書では、このケースの対処法として、保有効果を自覚し「もしいまこれを持っていなかったとして、手に入れたいだろうか」と距離をとって考えることを提案している。
年末の大掃除で捨てきれなかったものを断捨離したいときは、思い出してみてほしい。
2つめのケースは、「無駄遣いが直らなくて困っている友人の相談にのるとしたら?」。行動経済学の観点から、次のうちどの方法なら効果が期待できそうだろうか。
選択肢は次の通り。
1, 電子マネーだけを使うようにする
2, お金の使い道をあらかじめ分けておく
3, 仕事での苦労話を話してもらう
ここで押さえておきたいのが、「ハウスマネー効果」だ。予想外に得たお金は無駄遣いする傾向が強くなる現象のことだという。いわゆる「あぶく銭」と言うやつだ。裏を返せば、思い入れのある方法で得たお金はより大切に感じるということ。
よって、このケースでの正解は、意外にも3。「仕事での苦労話を話してもらう」だ。
「どのように仕事を頑張ってお金を稼いでいるのかをたっぷり語ってもらい、思い出してもらいましょう。自分がたくさんの代償を払って得ているお金だと本人が自覚すれば、くだらない支出は減っていくことが期待できます」
これらの例のように、日常生活でよくある困りごとも、実は行動経済学の考え方が解決のヒントになることは多い。本書ではほかにも「感情任せの判断で失敗しやすい人はどうするとよい?」「『家賃を払うくらいなら住宅ローンを』は信じていいの?」など、失敗やリスクを避けながら結果を出したいシーンでの行動経済学の考え方を、楽しみながら知ることができる。読破する頃には、「ズルい行動経済学」を味方につけられるだろう。
本書の目次は、以下の通り。
行動経済学の役割とテーマ
仕事で使える行動経済学
人間関係で使える行動経済学
マネーライフに使える行動経済学
日常生活に使える行動経済学
行動経済学を活かす!厳選キーワード
■平野敦士カールさんプロフィール
ひらの・あつし・かーる/経営コンサルタント、カール経営塾塾長、株式会社ネットストラテジー代表取締役社長、社団法人プラットフォーム戦略協会代表理事。日本興業銀行、NTTドコモを経て現職。早稲田大学ビジネススクール(MBA)非常勤講師などを歴任。上場企業を中心に数多くの会社のアドバイザー、研修講師を務める。著書に『大学4年間の経営学見るだけノート』(監修、宝島社)『カール教授のビジネス集中講義』シリーズ「経営戦略」「マーケティング」「ビジネスモデル」「金融・ファイナンス」(すべて朝日新聞出版)など多数。
(文・犬飼あゆむ/ライター)
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