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イーロン・マスクが火星を目指しているのはSFの影響? 天才たちが読んだ100冊とは

天才読書 世界一の富を築いたマスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊

 Twitterを買収して改革を始めたことで話題をさらっている、テスラCEOのイーロン・マスク氏。世界的経営者は、これまでにどんな本を読んできたのだろうか。

 『天才読書 世界一の富を築いたマスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊』(日経BP)は、イーロン・マスク氏、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏という、3人の天才イノベーターが読んだ100冊の本を紹介している。著者の山崎良兵さんは、3人に個別にインタビューし、それぞれの特集記事を執筆した経験を持つ。


SFがもたらした、人類の長い歴史を考える視野

 マスク氏、ベゾス氏、ゲイツ氏は、3人とも10兆円以上の資産を持つ大富豪であり、同時に猛烈な読書家でもある。彼らを成功に導いたのは、どんな本だったのだろうか。

 マスク氏は特に、SFやファンタジーを愛読しているという。2021年に映画化されたSF小説『デューン 砂の惑星』や、世界で最も人気の高いファンタジー小説の1つ『指輪物語』も読書遍歴にリストアップされている。マスク氏が読んできたSF・ファンタジー小説の中には、数百年単位という長い時間軸が描かれている作品もある。

 さらにマスク氏は、『ローマ帝国衰亡史』など、現実の歴史にも関心が高い。こうした、長い時間軸で架空の世界や現実の歴史を見つめる読書体験が、人類の歴史を踏まえて先を読む思考力を養ったのではないかと山崎さんは分析する。

 2000年代から、再利用可能な大型ロケットの開発に力を入れてきたマスク氏。山崎さんが「なぜ火星に行く宇宙ロケットを開発するのか」と質問したところ、こんな答えが返ってきたそうだ。

「人類の数千年にわたる歴史を考えると、文明が発展した時期がある一方で後退する時期もあった。再び同じことが起きないとは限らない。だからこそ来るべき危機に備えて、地球以外に人類が住める場所を確保する必要がある」

 このような壮大な視野は、SFやファンタジーを読んで培われたのかもしれない。

アマゾン創業の考え方はカズオ・イシグロがヒント?

 続いてのベゾス氏も、幼い頃から図書館に足しげく通う読書家だったという。そもそも、アマゾンは「インターネット書店」として始まったサービスだった。

 ベゾス氏がアマゾン創業時に採用した考え方である「後悔最小化フレームワーク」は、ある本からの学びがきっかけになっている。その本は、カズオ・イシグロの小説『日の名残り』だ。第二次世界大戦前に大きな権力を持っていた貴族の執事だった人物が、過去を振り返って思い悩むストーリーで、ベゾス氏はこの執事のように年を取ってから後悔しないよう「今やりたいことにチャレンジしよう」と考えるようになったのだという。

 3人目のゲイツ氏は、アメリカでは「読書マニア」としてよく知られている。毎年夏に5冊の推薦書を公表すると、選ばれた書籍が軒並みヒットするという注目の集めぶりだ。

 ゲイツ氏は、マイクロソフトのウィンドウズが世界的に普及する前から、1週間別荘にこもって大量の本を読みあさる「シンク・ウィーク(Think Week)」を年に2回続けてきた。1995年のシンク・ウィークでは、当時マイクロソフトが遅れを取っていたインターネット分野に関する書籍を読み込み、インターネット戦略のヒントを掴んで、その後の飛躍につなげた。

 このように、3人の経営者たちの成功の裏には読書があった。彼らがどんな本を読み、どうビジネスに活かしてきたのか、その読書脳が本書でたっぷりと解剖されている。本書掲載の100冊は、3人が書評を書いたり、著書やインタビュー、ブログ、SNSなどで読んだとコメントしたり、出版社が推薦を受けたと公表したりした書籍のうち、日本語版があるものから選ばれている。

 古典だけではなく、最近になって出版された本も多く含まれている。過去の読書量に満足せず、常に最新の知識や刺激を取り入れようとする天才たちの姿勢がうかがえる。

【目次】
はじめに

Chapter1 イーロン・マスクが選ぶ本
イーロン・マスクの横顔:世界を驚かせ続ける破天荒なイノベーター
PART1「イノベーション」"異常"な才能を持つ起業家の哲学
PART2「歴史」古代ギリシャ・ローマ...歴史に魅了されたマスク
PART3「歴史上の人物」反逆者がイノベーションを生む必然
PART4「SF」イノベーションを生む「SF思考」
PART5「ファンタジー」「世界を救いたい」という発想の原点
PART6「科学」宇宙から構造物まで──科学の本質に迫る
PART7「AI」AIは人類を本当に滅ぼすのか?
PART8「経済学」「経済学の父」と「科学的社会主義の父」から学べること
PART9「戦争」クラウゼヴィッツと孫子から学ぶ戦争の本質
PART10「生き方」人生は山あり谷ありで不条理

Chapter2 ジェフ・ベゾスが選ぶ本
ジェフ・ベゾスの横顔:けたたましい声で笑う"狂気"の経営者
PART1「経営」イノベーションを起こし、持続的に成長する企業の条件
PART2「リスクマネジメント・予測」未来をどう予測するのか
PART3「リーダー論」理論と実践で学ぶリーダーシップの本質
PART4「SF・小説」SFと宇宙に取りつかれたべゾス

Chapter3 ビル・ゲイツが選ぶ本
ビル・ゲイツの横顔:"悪の帝国"の支配者から、貧困や感染症と戦う慈善家に
PART1「経営」世界を正しく見て、成功と失敗の両方から学ぶ
PART2「経済学」世界の貧困と格差の問題をどう解決するのか?
PART3「未来予測」未来を予測する精度を高める方法
PART4「科学・テクノロジー」世界、宇宙、エネルギーの本質に迫る
PART5「自己啓発」心と身体の健康を高め、自分を磨く方法
PART6「歴史」全人類的な視点から歴史を見つめ直す
PART7「国家論・思想」国家の繁栄と衰退のカギは何か
PART8「人物」どん底でも希望を捨てない生き方
PART9「小説・ノンフィクション」世界を変えた巨人たちの生きざま

おわりに
参考文献
「マスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊」リスト

■山崎良兵さんプロフィール
やまざき・りょうへい/上智大学文学部卒、ニューヨーク大学大学院修了。1996年、日経BP入社。日経ビジネス編集部、ニューヨーク支局、日本経済新聞編集局証券部、日経ビジネス副編集長、クロスメディア編集部長、日経ビジネス電子版編集長を経て、2022年4月から経営メディアユニット長補佐。日経ビジネスで自動車やIT、小売りなどの分野を担当。テスラCEOのイーロン・マスク氏、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏を個別にインタビューし、それぞれの特集記事も執筆した。


※画像提供:日経BP


   
  • 書名 天才読書 世界一の富を築いたマスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊
  • 監修・編集・著者名山崎 良兵 著
  • 出版社名日経BP
  • 出版年月日2022年12月 9日
  • 定価2,640円(税込)
  • 判型・ページ数A5判・456ページ
  • ISBN9784296109579

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