マスク生活もすっかり定着した。
では、もしも「日本中で使い捨てマスクは1日に何枚使われている?」と聞かれたら? そんなのわかるわけない!......と思いきや、推論でだいたいの数値を導き出せる考え方があるのをご存じだろうか。それが「フェルミ推定」だ。
『「日本にコンビニはいくつある?」の問いに推論で答えを導く思考技術 知識ゼロからのフェルミ推定入門』(宝島社)は、GoogleやAmazonなどの入社試験にも採用された「フェルミ推定」の考え方が身につく1冊。
「ビジネス数学」を提唱する深沢真太郎さんが監修し、基礎から実践、総合トレーニングと順を追って、ビジネスで使える戦略的思考をわかりやすく学べる構成になっている。
本書の「はじめに」で、深沢さんは次のように述べている。
「実はこのようなテーマの書籍は書店のビジネスコーナーなどに行くと所狭しと並んでいます。にもかかわらず、なぜ本書は刊行されたのかというと、他の本は 『難しすぎて読めない』『自分もできるイメージが湧かない』からです」
本書は豊富な図解を用い、基本的に見開き1ページにつき1つのテーマを解説するスタイルなので、シンプルに内容が頭に入ってきやすい。「頭が良くなるためのトレーニングができる本」として、肩肘をはらずにクイズ感覚で取り組んでみるのが良さそうだ。
ここでは実際にどんな難問にアプローチしていくのか、一緒に見ていきたい。
本書によると、そもそも「フェルミ推定」とは、実際に調査したり正確に把握したりできないような数値を、自分の知識や与えられた前提をもとに論理的に推定・概算すること。
与えられた「前提」をもとに、「仮定」「分解」「比較」の3つの視点で考えるトレーニングを通して、すぐに答えを検索するのではなく自分で考える力や問題解決する力を鍛えることができる。
たとえば、冒頭の問題。
Q. 日本中で使い捨てマスクは1日に何枚使われている?
レベル1~4に分かれた「Part5 総合トレーニング」の中でも、レベル4と高難度なこの問い。本書では、「世界人口と比較するアプローチ」「年齢層別から推定するアプローチ」の2つの方法から推定の答えを導き出している。
よりシンプルな前者のアプローチであれば、前提として与えられている「全世界で1か月に使われている使い捨てマスクの数」「世界の人口」「日本の人口」の数値をもとに、「6490枚」というだいたいの回答を導き出せる。
一方で、中にはこんな問題も。
Q. 「親友」と「友達」を数値に置き換えて比較してください。
これは、「Part6 不確実な時代を生きる人のための数学的思考」で出題されている。数値で表すことが難しい、定性的なものごとを数値に置き換えて比較するトレーニングの1つである。
親友と友達を数字で比べる?? 一見、なんとなく心理的に抵抗がある人もいるかもしれない。けれど、あくまで思考トレーニングと割り切って気軽に考えてみてほしい。
たとえば、本書では数値で比べる方法として以下を解答例としている。
・1年間のうち、最も多くの時間を共有している友達
・今までの人生でもっとも古くから付き合いのある友達
時間や年数などの数字に置き換えることで、たとえば「1年に○時間以上会っている人は親友」「○時間未満の場合は友達」のように定義づけしてみることはできるかもしれない。
このように、ビジネスシーンで使いそうなものだけでなく、クイズ感覚で気軽に取り組める問題も本書には豊富に掲載されている。「フェルミ推定」を聞いたことはあるけれどなんとなく敬遠していた......という人も、肩の力を抜いてページをめくってみてほしい。
本書の目次は、以下の通り。
はじめに
フェルミ推定に必要な考え方を身につける 本書でのトレーニング
Part1 なぜ、今フェルミ推定なのか
Part2 仮定するトレーニング
Part3 分解するトレーニング
Part4 比較するトレーニング
Part5 総合トレーニング
Part6 不確実な時代を生きる人のための数学的思考
■深沢真太郎さんプロフィール
ふかざわ・しんたろう/ビジネス数学教育家、BMコンサルティング株式会社代表取締役、一般社団法人日本ビジネス数学教会代表理事。数学的なビジネスパーソンを育成する「ビジネス数学」を提唱し、延べ1万人以上を指導してきた教育の第一人者。日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士(数学)。著書は『数学的思考トレーニング』(PHP研究所)、『あらゆる悩みを自分で解決! 因数分解思考』(あさ出版)、『数字にだまされない本』(日経BP)など。
(文・犬飼あゆむ/ライター)
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