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キャンセルカルチャー、なくならない差別......人間はなぜこうも「不都合」な生きものなのか

バカと無知

 なぜ近年、「芸能人と正義」に関するニュースが大きな話題になりやすいのか。なぜ「炎上」すると一発退場させられるのか。なぜ、みんなこんなに怒っているのか。

 「新書大賞2017」を受賞した『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮社)の著者・橘玲さんが、またも世の中の"タブー"に切り込んだ。橘さんの新著『バカと無知 人間、この不都合な生きもの』(新潮社)は、近年のさまざまな社会情勢を切り口に、まさに不都合きわまりない人間の"本性"に迫っている。


 橘さんは本書「まえがき」で、安倍元首相を銃撃した「41歳の男」に言及している。「男」は、母親がのめり込んだ宗教団体に個人的な恨みを募らせていたとされているが、橘さんは彼をどう見たのか。

 「男」は、すでに閉鎖されているTwitterアカウントで、大ヒット映画『ジョーカー』について〈ジョーカーという真摯な絶望を汚す奴は許さない。〉と投稿している。「男」が、自身の境遇と『ジョーカー』を重ね合わせていたのは明白であった。実は、「男」がTwitter上で共有した〈映画『ジョーカー』が描いた「下級国民の反乱」〉という記事を書いた人物こそ、本書の著者である橘さんだ。

 橘さんは、この「男」を犯罪に向かわせたのは、社会からも性愛からも排除されるという"絶対的な孤独"であったのではないかとしたうえで、このように分析している。

"絶対的な孤独"のなかで、なぜ「まるで存在しないかのよう」になったのかを考えていくうちに、人生をさかのぼって教団が悪魔化されていった。自分が純粋な被害者(善)だという物語をつくろうとしたとき、教団とかかわりがあった(とされる)この国でもっとも有名な政治家が、絶対的な「悪」として立ち上がってきたのではないだろうか。

 つまり教団への恨みが先にあったのではなく、"絶対的な孤独"のなかで、自身を善・教団を悪とする「物語」が出来上がったというのだ。本書では、人間がこういった「物語」をつくり出し、それに固執してしまうメカニズムを解き明かしている。

 人間はなぜこうも"不都合"で"やっかい"な存在なのか。なぜ「キャンセルカルチャー」が流行っているのか? 「三人寄れば文殊の知恵」は実は成立しない? 差別はなぜなくならないのか? など、「人間について、知りたくないけれど、知っておくべきこと」の数々が本書で暴かれている。

〈著者・橘玲さんコメント〉
 人間というのはものすごくやっかいな存在だが、それでも希望がないわけではない。一人でも多くのひとが、本書で述べたような「人間の本性=バカと無知の壁」に気づき、自らの言動に多少の注意を払うようになれば、もうすこし生きやすい社会になるのでないだろうか。自戒の念をこめて記しておきたい。(「あとがき」より抜粋)

■目次

PARTⅠ 正義は最大の娯楽である
1 なんでみんなこんなに怒っているのか
2 自分より優れた者は「損失」、劣った者は「報酬」
3 なぜ世界は公正でなければならないのか
4 キャンセルカルチャーという快感

PARTⅡ バカと無知
5 バカは自分がバカであることに気づいていない
6 「知らないことを知らない」という二重の呪い
7 民主的な社会がうまくいかない不穏な理由
8 バカに引きずられるのを避けるのは?
9 バカと利口が熟議するという悲劇
10 過剰敬語「よろしかったでしょうか」の秘密
11 日本人の3人に1人は日本語が読めない?
12 投票率は低ければ低いほどいい
13 バカでも賢くなれるエンハンスメント2・0の到来

PARTⅢ やっかいな自尊心
14 皇族は「上級国民」
15 「子どもは純真」はほんとうか?
16 いつも相手より有利でいたい
17 非モテ男と高学歴女が対立する理由
18 ほめて伸ばそうとすると落第する
19 美男・美女は幸福じゃない?
20 自尊心が打ち砕かれたとき
21 日本人の潜在的自尊心は高かった
22 自尊心は「勘違い力」
23 善意の名を借りたマウンティング
24 進化論的なフェミニズムへ

PARTⅣ 「差別と偏見」の迷宮
25 無意識の差別を計測する
26 誰もが偏見をもっている
27 差別はなぜあるのか
28 「偏見」のなかには正しいものもある?
29 「ピグマリオン効果」は存在しない?
30 強く願うと夢はかなわなくなる
31 ベンツに乗ると一時停止しなくなるのはなぜ?
32 「信頼」の裏に刻印された「服従」の文字
33 道徳の「貯金」ができると差別的になる
34 「偏見をもつな」という教育が偏見を強める
35 共同体のあたたかさは排除から生まれる
36 愛は世界を救わない

PARTⅤ すべての記憶は「偽物」である
37 トラウマ治療が生み出した冤罪の山
38 アメリカが妄想にとりつかれる理由
39 トラウマとPTSDのやっかいな関係
40 人類がトラウマから解放される日

付論1 PTSDをめぐる短い歴史
付論2 トラウマは原因なのか、それとも結果なのか?

■橘玲(たちばな・あきら)さん
1959年生まれ。作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』が30万部超のベストセラーに。『永遠の旅行者』は第19回山本周五郎賞候補となり、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞を受賞。


※画像提供:新潮社


   
  • 書名 バカと無知
  • サブタイトル人間、この不都合な生きもの
  • 監修・編集・著者名橘玲 著
  • 出版社名新潮社
  • 出版年月日2022年10月15日
  • 定価968円(税込)
  • 判型・ページ数新書判・287ページ
  • ISBN9784106109683

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