1日に約1万冊の古本が古紙回収に出される中、本を「本のまま」で再利用する道を模索した結果、ありそうでなかった製品が誕生した。
それが、バリューブックスによる「本だったノート」。広島 蔦屋書店(広島市)で2022年8月14日から独占先行発売され、27日からは全国で一般発売がスタートする。
これは、オンラインでの古本買取販売をメインに行うバリューブックスが、買い取れなかった本を古紙回収に出さず、別の形で価値を生むために制作したノートだ。
最大の特徴は、まさに「本だった」記憶が残っていること。つまり、ノートのページの中に活字が混ざっていることがある。
「その文字のカケラは、ノートとしての利便性だけを考えると不要な、むしろ邪魔かもしれませんが、本だったことに思いを馳せていただきながら、使ってもらえるとうれしいです」(バリューブックス)
日本の古紙回収の仕組みや再生技術は、世界でもトップレベルだという。回収された本は新しい紙として再利用されているが、それは「本としての命を断つこととも言えます」とバリューブックス。
そこで、本を本の形のままにして別の価値を生み出したのが、「本だったノート」だ。
最初はクラウドファンディングとして6月13日からスタートし、わずか4日で目標を達成。このノートの制作には、紙のプロフェッショナルたちの協力が欠かせなかったそう。
こだわりの印刷物を手掛ける「藤原印刷」に、創業92年の老舗かつ再生紙抄造のプロフェッショナルである「山陽製紙」。そして、紙・デジタル問わずさまざまな領域でデザインを手掛けてきたイラストレーター・デザイナーの太田真紀さん。
「古紙回収にまわす本を少なくできないか?」というバリューブックスの想いに共感し、集まったプロたちの手で、「本だったノート」は完成した。
山陽製紙は公式サイトで、オーダーメイドで製作した事例としてこれを紹介しつつ、こうコメントしている。
「抄紙工程はもちろん、印刷会社や製本会社にもこだわり、クライアント企業が大切にする"できる限りの循環を生めるようなノートにしたい" という想いの具現化に努めた」
想いを共有して作られたこのノートには、1つとして同じものがない。ページにときおり混ざる「本だった」頃の活字を眺めながら、大切に使ってほしいという祈りが込められている。
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