いよいよ間近に迫った参院選。ところが、世間の関心は盛り上がっていない。参院選の投票率は年々低迷しており、前回の参院選では、投票率はついに50%を割り、史上2番目の低さとなった。
6月27日発売「AERA(アエラ)2022年7月4日号」(朝日新聞出版)の巻頭特集は、「もう政治家に任せておけない」。7月10日に投開票を控える参院選を前に、日本が抱える様々な課題について取り上げている。
若者の投票率は長期にわたって落ち込んでいる。2019年参院選では、10代~30代の投票率はいずれも30%台だった。その原因について、投票行動に詳しい早稲田大学の日野愛郎教授は「若者と政党の間でミスマッチが起きている」と指摘する。
日野教授が昨年の衆院選で実施した調査によれば、29歳以下の若者に「選挙の争点」を聞くと、上の世代に比べて同性婚の合法化、コロナ問題、候補者の男女均等化、候補者の被選挙権年齢の引き下げ、高等教育の無償化などを挙げる人が多かった。だが、実際に投票に結びついた争点は、憲法改正、沖縄基地問題などだった。つまり、若者は選挙の時、普段の自分の関心とは別の判断基準で投票していたのだ。日野教授は次のように分析している。
「いつも感じている課題がある一方、選挙前になると憲法や外交保障の問題に切り込む報道などが増えるから、『選挙はこう選ぶもんだ』と若者が思わされるのかもしれません。もしくは、自分の感じる課題が選挙前にさほど話題にならず、そういう課題解決を公約に掲げている政党があるか認識できないまま、入れたい政党がないと思って棄権してしまうのではないでしょうか」(日野教授)
この「若者と政党のミスマッチ」を解決しようと、政党も努力はしている。実はここ数年、各政党は子育てや学生の支援をはじめとする「若者政策」に注力してきた。現在では、教育・保育の無償化、待機児童削減、コロナ禍で困窮する学生を支援するための議員立法など、各党がさまざまな「若者政策」を推進するようになっている。
だが、各党に政策提言する超党派の若者団体「日本若者協議会」の代表理事を務める室橋祐貴さんは、「政党は若者の声を聞いているようで、そこまで重要視していない」と指摘する。現状、「政策公約をつくるうえで、若者の声を聞くことがプロセスとして位置づけられているわけではな」いからだ。
「気候変動や教育に関する政府の審議会や政党の部会には若者協議会は呼ばれますが、社会保障や雇用の公式の会議には呼ばれたことがありません。予算規模の大きな分野はまだ大人世代が中心です」(室橋さん)
また、「声の届かなさ」でいえば若者よりも深刻なのが、介護現場やワーキングプアといった、日々の生活に苦しむ社会的弱者だ。
2020年に「介護・看護」を離職理由に挙げた人は約7万1千人いて、その8割近くが女性だった。15年9月、当時の政権はいわゆるアベノミクスの「新三本の矢」の一つに「安心につながる社会保障」を掲げ、「介護離職ゼロ」を20年代初めに達成することを目指したが、いまだ実現していない。
ケア労働論が専門の山根純佳教授によれば、介護離職が無くならない背景には、制度の構造的な問題があるという。いまの介護保険制度では、要介護3以上でなければ特別養護老人ホームに入居できない。そのため要介護1や2では家族介護が基本となるが、認知症や脳梗塞などを患っている人の介護はデイサービスを利用するくらいでは仕事との両立が難しい。いったん家庭で介護が始まった場合、介護離職を強いられる設計になっているのだ。
その介護制度を支える介護職員も苦境に立っている。厚労省の21年の調査では、介護職員の平均月収は全産業平均を10万円以上も下回る。日本介護クラフトユニオン(NCCU)の村上久美子副会長によれば、この収入の低さの原因は、介護報酬(介護保険サービスの公定価格)が低いことあるという。
「賃上げをして介護従事者の数を増やさなければ、いずれ介護崩壊も考えられます。 すでに施設をつくっても人手が足りず、一部の階を閉鎖するところもあります。処遇改善は喫緊の課題です」(村上副会長)
記事ではこのほか、中高年男性の「孤独」問題、非正規雇用や年金の問題について取り上げている。
7月4日号の表紙は、2年半ぶりに来日した東方神起のユンホさんとチャンミンさん。久しぶりの来日に、取材時「待っていました」と伝えると、二人同時に「ありがとうございます」とお辞儀をしたという。インタビューでは、日本のファンへの思いやこれからについて語っている。
ほか、連載・大宮エリーさんが同じ東大出身者と語り合う「東大ふたり同窓会」には歌手の加藤登紀子さんが、最終回を迎えるKing Gnu井口理さんの対談連載「なんでもソーダ割り」には、スタジオジブリ・プロデューサーの鈴木敏夫さんがゲストとして登場する。
今号にはこのほか、以下のような記事を掲載している。
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