子どもが学校に通い始めてから、「不器用・ぶきっちょ」「運動音痴」「字が汚い」などと言われることが増え、心配している保護者の方も少なくないのでは。もしかするとそれは、DCD(発達性協調運動障害:Developmental Coordination Disorder)という神経発達障害かもしれない。
3月14日『イラストでわかるDCD(発達性協調運動障害)の子どものサポートガイド 不器用さのある子の「できた!」が増える134のヒントと45の知識』(合同出版)が発売された。
「不器用」と呼ばれるDCD(発達性協調運動障害)の子どもたちは、約5~6%いるという。ADHDの約5%と同じくらい、自閉症スぺクトラム障害 (ASD) の約1%と比べ、はるかに高い割合だ。困っている子はたくさんいるのに、まだまだ認知度が低く、ほかの子と同じようにできないのは、本人のやる気の問題や努力不足と誤解されてしまうことも多い。
周囲から叱責、嘲笑され、いじめや不登校の原因になることも。さらに、不合理な反復練習は本人の社会性の発達、情緒や学習、自尊感情にも深く関係する。早期に気づいて、適切な支援をしていくことが必要だ。
本書では、当事者や保護者からのリアルな訴え、教師や指導者の支援に関する相談などをもとに、実際に考えられる場面を集めている。一例を紹介しよう。
■鉛筆の持ち方 こんなときどうする?
たとえば、何度注意しても、鉛筆の持ち方が矯正できない、というケース。
できたところを褒める、持ち方の多様性を認めることも必要だと解説されている。まずは、子どもの学ぶ意欲を高めるような関わりや、評価の視点を幅広く持つことが大切だ。場合によっては、正しい持ち方ではなくても許容しても良い。
■ボールを捕る動作
不器用さのある子どもがボールを投げるときに見られる棒立ちの姿勢は、キャッチする動作にも見られる。投げられたボールの方向に合わせて柔軟に姿勢を変化させて捕ることに難しさがあるからだという。
動きが成熟すると、ボールを身体に近づけながらキャッチできるようになる。本書ではこのように、不器用さのある状態・成熟した動きを見開きで対比し、一連の動作の流れをイラストで分かりやすく注目すべきポイントを挙げている。
■リコーダーの困りごと
スムーズに指を動かすのが難しい子がいるリコーダーの授業。指先の動きの練習法や市販グッズを紹介。
■DCD の子どもを理解し困り事を解決する 45 の知識
その他、医療・教育の専門家の観点から、子どもたちを傷つけずに支援をするうえで知っておきたい知識を紹介。家庭での教育にも取り入れていきたい。
本書の目次は以下の通り。
第1部 DCD にみられやすい 57の困り事と134 の支援のヒント
筆圧の調整
コンパス
リコーダー
ボールを投げる
縄とび
開脚とび
蝶々結び...など
第2部 DCDの子どもを理解し困り事を解決する45の知識
DCD の「脳機能」の問題ってどのようなことですか?
DCD は学習と関係しますか?
DCD はどのように診断されるのですか?
介入の際に気をつけることはありますか?
書字指導についてどうしたらいいでしょうか? ...など
不器用さに周りの理解がないと、子どもが自分自身を責めてしまう可能性もある。適切な関わり方をすることで、子どもの「できた!」を増やしていくことができる。その子のペースで伸び伸びと成長していくのをサポートするためのノウハウが、具体的な事例とともに分かりやすくまとめられた一冊。
著者プロフィール
■中井昭夫
医学博士、小児科専門医、子どものこころ専門医、公認心理師、臨床発達心理士
武庫川女子大学教育研究所/大学院 臨床教育学研究科/子ども発達科学研究センター教授
1986年福井医科大学卒業、1991年同大学院博士課程修了。福井医科大学小児科助教、福井県こども療育センター主任医長、福井大学子どものこころの発達研究センター特命准教授、兵庫県立子どもの睡眠と発達医療センター副センター長などを経て、2018年より現職。
■若林秀昭
作業療法士 兵庫県立リハビリテーション中央病院
1991年国立東名古屋病院附属リハビリテーション学院卒業、2011年兵庫教育大学大学院学校教育研究科修了。免許取得後、作業療法士として医療機関、青年海外協力隊、小児療育センター、作業療法士養成校に勤務しながら養護学校自立活動専任講師(非常勤)に従事、2008年より現職。
■春田大志
理学療法士 京都府立宇治支援学校
2000年3月、京都大学医療技術短期大学部理学療法学科卒業後、京都府立学校の実習助手(内部専門家)として採用され、向日が丘養護学校にて11年間勤務。2010年の宇治支援学校開校準備室を経て、2011年より現在に至る。
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