フジテレビ系ドラマ「ミステリと言う勿れ」で物語のカギを握り、話題の『自省録』。世界史の授業で名前だけは習ったという人もいるかもしれない。どんな人物が、どんなことを書いた本なのだろうか。
著者のマルクス・アウレリウス(121~180)は、第16代ローマ皇帝。ローマ帝国全盛期に善政をおこなった「五賢帝」の一人であり、ストア派の哲学者でもあったため、「哲人皇帝」とも呼ばれる。『自省録』は、マルクスが毎晩就寝前につけた、「瞑想記録ノート」だ。
マルクスが自分自身を叱咤激励するために書いたこの『自省録』には、現代の私たちにも必要な教訓がたくさん詰まっている。世界各国のリーダーたちの愛読書としても知られ、南アフリカでアパルトヘイトと闘って投獄されたネルソン・マンデラさんが獄中で繰り返し熟読していたほか、元アメリカ大統領のビル・クリントンさんも年に1回は必ず読み返しているそうだ。
そんな『自省録』が初心者にもわかりやすく読めるのが、『超訳 自省録 エッセンシャル版』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)だ。全体で487章ある文章から、現代に生きる人にとって意味をもつと思われる180章を厳選して翻訳している。
「著者が皇帝で哲学者」というと難しそうに感じるかもしれないが、毎晩の日記なので、一章一章が短くて読みやすいのが特徴だ。しかも、内容も現代の日本人の感覚に意外となじみやすい。
時は流れる川のようだ。
(『超訳 自省録 エッセンシャル版』005より抜粋)
見た目の印象だけで、ものごとを判断することのないように。
(同上077より抜粋)
あたえられた環境に自分自身を適応させることだ。
(同上080より抜粋)
助けてもらうことを恥じてはいけない。
(同上086より抜粋)
今の私たちも日々参考にしているような教訓を、このように、約1000年前のローマの皇帝も書き記していたのだ。少し身近に感じはしないだろうか。
なかには、こんな章もある。
夜が明けても起きるのがつらいとき、自分にこう言い聞かせてみよう。
「私は、人としてのつとめを果たさなくてはならない。そのために生まれてきたというのに、なんで不平不満を口にすることができるというのだろう? それとも、まだ寝間着を着たまま毛布にくるまって、まどろんでいたいというのだろうか?」
「でも、こちらのほうが心地よいから......」
では、君は心地よい状態を求めるために生まれてきたというのか? 何かをしたり、経験したりという活動をしないというのか? なぜ人としてのつとめを果たさないのか? 自然界が求めるつとめを果たさないのか?
「だが、ときには眠ることも必要だし......」
たしかに、それはそうだろう。だが、なにごとにも限度というものがある。その限度を超えてまで休息する必要はない。限度を超えたといっても、仕事にかんするものではないだろう。まだまだその水準には達していないはずだ。
(同上052)
ローマ皇帝にも、起きるのが嫌でいつまでも布団にいたい朝があったのだ。それでも、現代の私たちのように「あと5分......」という誘惑に負けず、強い志で起き上がって仕事へ行ったマルクス。人間らしい悩みをもちつつも、自分を鼓舞して頑張る皇帝の姿に、きっとあなたも勇気をもらえるはずだ。
【目次】
はじめに ローマ皇帝マルクス・アウレリウスと「自省録」について
Ⅰ 「いま」を生きよ
Ⅱ 運命を愛せ
Ⅲ 精神を強く保て
Ⅳ 思い込みを捨てよ
Ⅴ 人の助けを求めよ
Ⅵ 他人に振り回されるな
Ⅶ 毎日を人生最後の日として過ごせ
Ⅷ 自分の道をまっすぐに進め
Ⅸ 死を想え
■編訳 佐藤けんいち(さとう・けんいち)さんプロフィール
ケン・マネジメント代表。1962年京都府生まれ。一橋大学社会学部で歴史学を専攻、米国レンセラー工科大学(RPI)でMBAを取得(専攻は技術経営)。銀行系と広告代理店系のコンサル会社勤務を経て、中小機械メーカーで取締役経営企画室長、タイ王国では現地法人を立ち上げて代表をつとめた。編訳書に『ガンディー 強く生きる言葉』『超訳ベーコン 未来をひらく言葉』(いずれも小社刊)がある。
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