何にも乱されず、凛として穏やか。そんな内面をつくってくれるのが、茶道だ。しんとした空間で、相手のことだけを思ってお茶を点てる。その心得と礼儀作法が、美しい心を育ててくれる。
さらには、生活習慣・所作・コミュニケーション力・「和」の知識・健康などなど......お茶は、私たちにさまざまなよいことをもたらしてくれるのだ。
でも、茶道ってなんだか敷居が高そう......。そんなあなたにおすすめしたいのが、『「お茶」を学ぶ人だけが知っている凛として美しい内面の磨き方』(実務教育出版)。裏千家茶道家の竹田理絵さんが、心を育てる茶道の本質を、ていねいにわかりやすく教えてくれる。
ここでは特別に、第1章全文を11回の連載形式でご紹介する。今回は第9回。茶道は一人では成り立たない。いつも「周りに生かされている」と、感謝の気持ちを抱くそうだ。
1回目から読む
(以下、本文より)
周りに生かされていることを知る ――感謝する心になる
複数の協力者がいないと成立しないお茶事やお茶会を行うと、一人では本当に何もできず、「周りの方々のおかげなのだ」と感謝する気持ちが自然と湧いてきます。
茶道は日本の総合伝統文化といわれるだけあり、茶室の中には日本のさまざまな伝統文化が詰め込まれています。掛け軸、お茶碗などのお道具類、着物、お抹茶、建築......、どれひとつ欠けても、何だか間の抜けたお茶会になってしまいます。
また、お茶室の内外のお掃除やお花や和菓子、お料理の準備など、一人だけではできないことも多くあります。ですから、お茶会ひとつとっても、周りに生かされていることを知り、さまざまなものに対しての感謝の心が生まれるのです。
お茶会にいらしたお客様から、「良いお茶室ですね」とお褒めいただくと、一生懸命に作って下さった棟梁のおかげさまと感じます。
私が借りている銀座のビルのフロアはとても小さく、その中に四畳半のお茶室と水屋(茶室と壁を隔てた所にある台所のような場所)、そして待合いのスペースも作りたいというお願いは、大変難しいものでした。
この人なら、とお願いした棟梁に「なんとか頑張ってみるよ」とおっしゃっていただき、そのような中で、棟梁自ら選んだ木材を使った数寄屋造りの本格的なお茶室を作っていただきました。
「お茶がとっても美味しかったです」
とおっしゃっていただく時、いつも美味しいお茶を作って下さるお茶屋さんに感謝します。
私が銀座にお茶室を開く際、「小さなお子さんからご年配の方、海外の方まで、どなたにも飲みやすく、美味しいお茶を」との思いから、京都宇治のお抹茶屋さんを一軒づつ、20軒ほど回ってお茶を飲ませていただきました。
そして、宇治のはずれにご家族だけで経営されているお店でいただいたお茶こそぴったりのお茶だと思い、仕入れをお願いしました。
後から聞いた話では、抹茶の品評会で日本一を3回取られた、由緒あるお茶屋さんとのことでした。今も変わらず、そのお茶をお出ししています。
「お茶碗やお道具が素敵だったわ」と言われると、全国各地、日本の伝統品を守って作って下さる人々や、それらを目利きして仕入れてくださるお道具屋さんに感謝します。
「本当に良いお茶会でした」と喜んでいただくと、お茶会の裏方仕事を手伝ってくれたスタッフの方々に頭が下がります。
お茶会をすると、本当にいろいろな方々のおかげさま、と感謝の念が生まれます。
人は一人では生きていけません。あらゆるものに支えられて生きています。
不平不満を持って生きるのではなく、いまあることに素直に感謝してみる。そうすることで、人生を豊かで潤いあるものに変えていくことができるのです。
■竹田理絵(たけだ・りえ)さんプロフィール
茶道家(裏千家教授)、株式会社茶禅代表取締役。
神楽坂生まれの三代目江戸っ子。青山学院大学文学部卒業後、日本IBMに入社。日本の伝統文化の素晴らしさを伝えるため、退社後、株式会社茶禅を設立。銀座と浅草に、敷居は低いが本格的な茶道を体験できる茶室を開設する。世界30ヵ国の人々に日本の伝統文化を伝え、のべ生徒数は3万人超。また、10ヵ国以上の国々に赴き、さまざまな場所で茶道の点前を披露してきた。2017年、ブルネイ国王即位50周年時にブルネイにて茶会を披露。各国首相や大使館、官庁、VIP、一部上場企業からの信頼も厚く、お茶会を多数実施。千利休から学ぶビジネス研修は経営者が注目し、企業研修にも取り入れられている。ハーバード大学等、茶道を取り入れた教育・教養研修実績多数。初めての著書『世界のビジネスエリートが知っている 教養としての茶道』(自由国民社)は3.3万部を超えるベストセラーになった。
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