どんな別れにも、ごたごたがつきもの。波風立てず平穏に別れたい、傷つきたくない、切り出しづらい......現代の人々は、「別れ」に敏感だ。そんな「別れ」を、誰かが代行してくれるとしたら?
『トロナお別れ事務所』は、(今はまだ)架空のビジネス、「お別れ代行サービス」をテーマにした韓国発の小説。著者のソン・ヒョンジュさんは、第1回ドンネ青少年文学賞大賞を受賞し、「必要とされている問題小説」を書く作家として評価されている。本書は、ソンさんの初めての日本語訳作品だ。
死に別れ、冷めて別れ、
飽きて別れ、金の切れ目で縁が切れ、
どんな別れも
〈トロナお別れ事務所〉が代行致します。
主人公はイ・カウル。30歳女性、定職なし、恋人なし。非正規雇用の職を転々としているうちに、気づけば20代が終わってしまい、人生に焦りが見えてきた。そんなときに〈トロナお別れ事務所〉という妙な会社と面接することになる。アクの強い社長から「男性を振るほう? 振られるほう?」と尋ねられ、恋愛経験のないカウルは強がって「振るほうです」と答えた。すると、その一言で合格が決まってしまった。
こうして、〈トロナお別れ事務所〉の「お別れマネージャー」として働くことになったカウル。彼女はお別れ代行サービスを通して、さまざまな「別れ」と出会っていく。厄介な恋人との別れ、やめられない習慣との決別、価値観の合わない夫婦の離婚。別れの数だけ感情がうずまき、一筋縄ではいかない人間模様がそこにあった。
カウルが初めて担当した仕事は、恋人同士の別れだった。依頼人の男性が別れたいのは、彼との通話内容をびっしりと記録したり、美術館デートが決まれば美術史を勉強したりするほど恋人に尽くしすぎる女性、カン・ミフ。恋に奔放だった母親の影響で恋愛にいいイメージのないカウルは、ミフのやり方に面食らう。
依頼人の意思をミフに伝えるカウルだったが、一方的に、しかも他人を介して告げられる別れを、ミフは受け入れることができず逆上する。カウルはなんとかミフを説得しようと四苦八苦。社長は「ビジネスだ」と割り切って強行突破させようとするが、そう簡単に済むほど、人の感情は単純なものではなく......。
別れたい人がいれば、別れたくない人がいる。あなたにも一つや二つ、別れたいもの、あるいは別れられないものがあるのではないだろうか。「お別れ代行サービス」なんて突拍子もないビジネスに聞こえて、実は誰にとっても他人事ではないのかもしれない。「別れ」をとりまく人々のドラマに、カウルと一緒に振り回されてみては?
■ソン・ヒョンジュさんプロフィール
ソウル生まれ。大学で歴史学を、大学院で新聞放送学を専攻した。2008年国際新聞新春文芸で短編小説「母のアルバイト」で登壇し、2009年文学思想で短編小説「あなたの男」で新人賞を受賞。2011年「不良家族レシピ」で第1回ドンネ青少年文学賞大賞を受賞。他の著書に「少年、黄金バスに乗る」、「ヘラクレスを盗む」などがある。
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