東京・町田にある白洲次郎・正子夫妻の自邸・「旧白洲邸 武相荘(ぶあいそう)」。緑に囲まれたこの旧宅は一般に公開されており、夫妻の優雅で洗練された暮らしぶりが窺える。粋で自らの信条(=プリンシプル)を生涯貫いた次郎と、骨董を愛し、美の目利きとして知られた正子。ふたりの美意識は、長女で武相荘の館長を務める著作家・牧山桂子さんにも受け継がれている。
そんな牧山さんの著書、『武相荘、おしゃれ語り』(小学館)は10月に発売されるや、1カ月足らずで3刷を重ねる人気だ。
本書は、女性誌「Precious」の好評連載を書籍化したもの。豊かな自然に恵まれた武相荘で、牧山さんの春夏秋冬の装いを撮影した。母・正子がオーダーしたというオートクチュールや着物、古代ガラスのアクセサリーに、父・次郎のヨーロッパ土産であるエルメスのバッグなど、長く愛せる名品とともに、現代のシャネルやミッソーニ、プチプライスのアイテムまで、自在に着こなす牧山さんのセンスが随所に感じられる。
「自分が選んだものこそが自分のブランドで、その人だけの心の中にあります。自分で選んだ友達こそが、自分に対するセレブです。金持ちでも有名人でもありません」(本書より)
シンプルな服に小物で変化を付けるのが好きという牧山桂子さん。「小物哲学」や、祖母・母・自身の着物を紹介するコラムも。母・正子の着物や帯を、洋服の感覚が顔を出すという独自のセンスで着こなす姿はさすがだ。
さらに、娘だからこそ知る白洲夫妻のエピソードや「プリンシプル」に支えられた暮らしがわかるエッセイは、これからの生き方を考えるヒントにもなる。
おしゃれの真髄は、お金をかけることではない。自分の中にある「プリンシプル」を大切にすることなのだと気づかせてくれる。毎日のおしゃれの指針にしたい、目の保養にもなる一冊。
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