「アンガーマネジメント」という言葉を聞く機会が増えた。誤解されることが多いが、「怒らないこと」ではなく、「怒りをコントロールすること」を目的とするそうだ。つまり、怒らなくてはならない場面では、怒ることも大切なのだ。
『なぜ私は怒れないのだろう』(産業編集センター)は、怒りをコントロールするプロの目線で、「怒るのが苦手な人」「怒り方がわからない人」へ向けて、怒れない理由・怒りという感情の必要性・上手な怒り方を解説する本だ。
著者は、日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介さん。本書によれば、この30年間ほどで、「怒れない人」が増えているという。そしてそれは、褒めて伸ばす文化と、SNS文化の2つが元凶だと安藤さんは指摘する。
怒ることは教育上良くない、怒っては部下が育たない、怒るなんて未熟な大人のすることといった思い込みを持っている人が、多いのではないでしょうか。これは社会全体を覆う空気感のせいですが、その空気感をつくることになった文化が、「怒れない人」をつくりだしている元凶です。
日本アンガーマネジメント協会と産業編集センターが共同で実施したアンケート調査によると、実に4割の人が「怒りを感じても、何もせずにモヤモヤするだけ」と回答している。これに対し、安藤さんは、「怒りを感じたとして何もしなければ何も解決しません。時間が解決してくれるとも言いますが、それは積極的な解決というよりも消極的な解決であって、運を天に任せるようなものです」と言う。
そこで本書では、「怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになる」ことをめざした。
上手に怒れるようになれれば、皆さんが危惧しているような怒ることで嫌われたり、人間関係にひびが入るようなことはなくなります。またモヤモヤした気持ちのまま過ごして心身に不調をきたすようなこともなくなります。
アンケートの概要は次の通り。「怒ることが苦手だ」と感じている728人からウェブで回答を得た。
●あなたが怒れない理由を教えてください(複数回答可)
[選択肢詳細]
・いい人でいたいと思っている(怒ることで嫌われたくない)
・怒っても仕方がないと思っている(怒ることをあきらめている)
・怒っている人を見ると怖いと思う(そういう人に自分はなりたくない、そう見られたくないと思う)
・怒り方がわからない(どう怒ってよいのか、伝えてよいのかわからない)
・自分に自信がない(自分の言うことなんて聞いてくれない、言っても無駄だと思う)
・間違えたくない(怒ることで失敗をしたくない)
・怒りを怒りだと感じていない(自分が怒っていることに気づくのが遅い)
・怒ることは恥ずかしいことだと思っている(いい大人が怒るのは恥ずかしいこと)
・責任をとりたくない(怒ったことに対する結果、影響を考えてしまう)
過半数の人が「いい人でいたい」「怒っても何も変わらない」と感じていると回答している。嫌われることへの恐怖感を持っていること、また適切に怒ることの効用が理解できていないことがわかる。
●あなたの怒りはどちらのタイプですか?
・後から怒りがじわじわくるタイプ 53%
・その場ですぐに怒りを感じるタイプ 47%
何か起きたとき、怒りを感じるのに時差があると感じるタイプがやや上回っている。後から怒りがわいてきて、自分で抱え込んでモヤモヤしてしまう経験をよくする人も多いのではないだろうか。
●後から怒りがじわじわくるタイプの方へ:後から自分が怒っていると気づいたとき、どうしますか?(複数回答可)
[選択肢詳細]
・他の人に話す
・何もできずにモヤモヤするだけ
・忘れてしまう/忘れる努力をする
・日記をつける
・直接本人に言う
・特に何もしない
・SNSで気持ちをシェアする
「他の人に話す」が最も多く53.7%。一方、4割を超える人が、怒りを感じたとしても「何もできずにモヤモヤするだけ」と回答している。
怒りを上手にコントロールして、適切に表明していく方法を学べば、問題解決の可能性も高まるはず。日常生活はもちろん、仕事にも役立つ怒りのスキルを身につけておきたい。
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