自粛生活が続き、些細なことにもイライラしてしまうことが増えた。小さな怒りを積もらせている人がいる一方で、パワハラ防止法が広く周知されることで、部下への対応がパワハラに該当するのではないかと危惧し、うまく指導ができないといった悩みを抱える人も多いそうだ。そんな日々の中で生まれる「怒り」にフォーカスし、怒りをコントロールしながらうまく付き合っていくための虎の巻『怒りの扱い方大全』(日本経済新聞出版)が発売された。
コロナをきっかけに、私たちの働き方は大きく変化した。多くの会社でテレワークを導入し、オンラインで会議や商談が行われ、それらのシステムに馴染めず、知らず知らずのうちにストレスを抱えている人や、対面で人と会話をする機会も減少し、イライラを募らせている人も多いようだ。
終わりが見えてこない自粛生活に、「どのように怒りと向き合っていけばいいのだろうか」「どうしたらストレスフリーな生活を送れるのだろうか」といった相談を受けることも多いと、本著者の戸田久実さんは語る。
そこで本書では、現在の社会情勢から生まれた怒りや、職場や家庭内で発生した怒り、さらに自分自身への怒りなど、様々なシーンで生まれる怒りに対し、「アンガーマネジメント」や「アサーティブコミュニケーション」「アドラー心理学」の知識を組み込んだ「言葉がけ」を駆使し、どのように対処していくかをわかりやすく解説する。著者の戸田さんは、講師歴29年のコミュニケーション指導に定評があり、過去に22万人を指導した実績の持ち主。
さらに、同著者の『アンガーマネジメント(日経文庫)』(日本経済新聞社)は、お笑い芸人のオリエンタルラジオの中田敦彦さんが運営する「中田敦彦のYouTube大学」でも取り上げられたことで話題となった。
発生してしまった怒りに対して、自分自身を責めたりせずに、どのように向き合っていけばいいのか、じっくり取り組んでいくためのバイブルにしたい。
『怒りの扱い方大全』に掲載されている質問の一部をご紹介する。
【Q パワハラと言われるのが怖くて部下を叱れません...】
A 「叱る」のではなく、「リクエスト」する
前述した2020年のパワハラ防止法の施行後、「叱るのはよくないこと」「部下から『パワハラだ』と言われるのが怖くてうまく叱ることができない」などのご相談が一気に増えました。
管理職世代の人たちが部下の立場だった頃は、上司から強い口調で怒鳴られるのは、よくある光景でした。ただし、現在部下を持ち管理職の立場になっている人たちは、自分自身がそのような叱り方しか知らないため、叱るということがわからない、というのが著者の見解です。叱るということは、行動や意識の改善を促すことなので、叱ることが悪いことではないと解説しています。
本書では、叱るときのポイントを、「次からこうしてほしい」「ここを直してほしい」と要望を伝える言い換えをする。
つまり「リクエストする」のです。どう行動してほしいのか、なぜこれを改善してほしいのかという理由をセットにすれば、相手に伝わります。
「使えないな」「お前なんて、ダメ人間だ」と、相手の人格や能力を否定する言葉はパワハラにあたるので、気をつける必要があります。
【Q 自分より実力が低いはずの人が評価されると妬ましいんです】
A 嫉妬心を成長の糧にする
「なんであの人ばかり評価されるのだろう。わたしのほうができるはずなのに!」
職場の人間関係でのトラブルに嫉妬心はつきものです。
本書では、嫉妬は行動のモチベーションになると解説しています。
嫉妬心を含んだ怒りをぶつける人ほど、いつも不平不満を言う傾向があります。不平不満を言い続けても、評価されたり、よりよい仕事ができるようにはなりません。イライラして本来のやるべきことに集中できなくなり、かえって自分の評価を下げてしまうくらいなら、もっと健全な方向にその嫉妬心を使うほうがよいのです。
本書では、嫉妬心という怒りの感情は、行動を起こすモチベーションになると言っています。
「悔しいからわたしだってがんばってやる!」と成長するための原動力として活用するのが有効ということです。
同時に、「自分に足りなかったことはなんなのだろう」「そのためにどんな行動や努力をしていく必要があったのだろう」と考えてみると、より建設的に考えられます。
また、実力が足りなくても評価されている人の特徴として、下記の3つを挙げています。
・人からもらったアドバイスに対して、素直に耳を傾けて即行動に移している
・ちょっとした雑用に思えることでも快く引き受けている
・人間関係をうまく築きながらまわりの力を借りている 能力以外のところで評価されている人たちは総じて「素直な人」。参考にしていきたいものです。
職場の人への怒りだけでなく、パートナーや夫など身近な人、子どもへのイライラにも答えてくれる。例えば、「夫の存在が嫌で、前から気になっていたちょっとしたクセが許せません」という質問に対しては、「怒りに点数をつけて仕分けする」と、その手法を説き明かす。
イライラしているものの、今後も一緒にいると決めた場合には、怒りの感情を分解し、気になる行動の仕分けを行うこと、そしてその行動に点数をつけて怒りの大きさを把握するという対処法があります。
たとえば、夫のちょっとしたクセがどのようなものなのか洗い出します。「洗濯物をカゴに入れない」「過去の浮気」など。それらに対して0~10点で「許せない度合い」の点数をつけてみるのです。「洗濯物をカゴに入れない(1~2点)」に対し、「過去の浮気(9~10点)」のように、点数の度合いによって「傷ついた」気持ちが癒えていない、わだかまりが残っていることなどが明確になります。そこからはまた、選択です。言ってスッキリするのであれば、伝える選択をするのがいいでしょう。
本書の構成は下記の通りである。
chapter1 怒りの仕組みを知っておこう
chapter2 まずは小さな怒りをしずめる練習から 初級編
chapter3 ちょっとしたテクニックが役に立つ 中級編
chapter4 重度の状況にはチームで対応する 上級編
chapter5 自分に対するイライラの扱い方
少しでもストレスフリーな日々を増やし、笑顔を取り戻したい方、必見だ!
■戸田久実(とだ・くみ)さんプロフィール
アドット・コミュニケーション株式会社 代表取締役/一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事。立教大学卒業後、大手企業勤務を経て研修講師となった。
銀行・生保・製薬・通信・総合商社などの大手民間企業や官公庁で「伝わるコミュニケーション」をテーマに研修や講演を実施している。
「アンガーマネジメント」「アサーティブコミュニケーション」「アドラー心理学」をベースとした「言葉がけ」に特化するコミュニケーション指導に定評があり、これまでのべ指導数は、22万人に及ぶ。近年では、大手新聞社主催のフォーラムへの登壇やテレビ、ラジオ出演など、さらに活躍の場を広げている。
著書に『日経文庫 アンガーマネジメント』(日本経済新聞出版)、 『アンガーマネジメント 怒らない伝え方』『アドラー流 たった1分で伝わる言い方』(以上、かんき出版)、『いつも怒っている人も うまく怒れない人も 図解アンガーマネジメント』(かんき出版)、『働く女の品格』(毎日新聞出版)『マンガでよくわかるアンガーマネジメント』(日本能率協会マネジメントセンター)など多数。
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