妊娠・出産は喜ばしいことだが、コロナ禍の自粛ムードの中では「喜んでいいのだろうか」とひそかに悩んだ経験をした方も多いのではないだろうか。面会や立ち合い出産が難しかったり、親や親せきなど身近な人と祝うこともできなかった、という人もいるだろう。
『コロナ禍妊娠日記』(幻冬舎)は、そんな妊婦のひとり、マンガ家・おおがきなこさんが、自身の体験をメディアプラットフォームnoteに綴った連載を単行本化した作品だ。
感染対策のために「おひとりでご来院ください」と病院スタッフに告げられ、「コロナ禍妊婦」であることを実感したおおがきなこさん。しかし、この時すでにコロナ発生から約1年経っていたため、「今の世の中で出産する不安」は自身でも拍子抜けするくらいなかったという。
本書では幸せいっぱいの妊婦の姿ではなく、「妊娠したけど幸せ感じられてないよ」「子どもほしいってまだ思えないよ」という正直な気持ちが淡々と綴られている。妊娠中には「幸せそうにしてなきゃ」とプレッシャーを感じつつも「でもコロナ禍だから深刻そうにもしなきゃ」と忖度してしまうこともあったという。
「妊娠より、もうコロナの方が身近だった」「多分私、産むときもひとりなんだ」「4度目の緊急事態宣言、聞き慣れちゃって全然ヒヤヒヤできません」「赤ちゃんがいるからって強く優しくはならない」
誰に忖度することもなく、正直な気持ちが綴られた作品だ。「言っちゃいけないひとりごとなんかないよ」が作品のテーマだとおおがきなこさんは語る。
コロナ禍だからこそ嬉しさや不安を表しにくい人も多いはず。自分に正直になれずに疲れてしまう。そんな方に読んでもらいたい1冊。
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