『ビタミンF』『ゼツメツ少年』などの作品で知られる直木賞作家の重松清さんが、9月17日、最新単行本『かぞえきれない星の、その次の星』(KADOKAWA)を刊行した。
『かぞえきれない星の、その次の星』は、雑誌「小説 野性時代」掲載作に書き下ろしを加えた全11篇からなる短編集。
11篇それぞれのタイトルと内容は以下の通り。
●「こいのぼりのナイショの仕事」
感染症がひろがり休校になってしまった春、子どもたちのためにこいのぼりが企んだのは......。
●「ともしび」
昔むかし、いくさに敗れた人たちを迎えた村は、今は「きみたち」――自分の居場所をなくした子どもたちを、迎える村になった。
●「天の川の両岸」
感染症流行で、大切な相手であればあるほど会えない日々。パパは毎日、画面越しの娘と会話する。
●「送り火のあとで」
亡くなった母を迎えるお盆、今年は新しい「ママ」がいる。ぼくと姉の揺らぐ気持ちは......。
●「コスモス」
ミックスルーツのリナはお母さんと二人暮らし。友達からは、「日本人っぽい」とも「日本人離れ」とも言われて――。
●「原っぱに汽車が停まる夜」
原っぱで遊ぶ、大勢の子どもたち。夜だけ現れるこの不思議な場所に来る子たちには、「影」がない。
●「かえる神社の年越し」
なかったことにしたいこの一年の切ない願いを託されて、神社の「かえる」たちは年を越す。
●「花一輪」
鬼退治のため村に逗留中の桃太郎の一行。なかなか動かない彼の狙いとは......。
●「ウメさんの初恋」
もう先が長くないというひいおばあちゃんのウメさん。彼女のおひなさまと戦争の話を聞いた私は......。
●「こいのぼりのサイショの仕事」
新しい春もウイルスは猛威をふるっている。おとなだけの「ナイショの仕事」ができない僕たちだって、できることをしたいんだ。
●「かぞえきれない星の、その次の星」
気がつくと、「ぼく」は夜の砂漠にいた。星空の下、出会った「おじさん」と話したのは......。物語と世界の真実を示す、最後の一篇。
一つ目の「こいのぼりのナイショの仕事」は、「希望ヶ丘」という町を舞台とした作品。
感染症がひろがり、休校になってしまった春のこと。希望ヶ丘にいるこいのぼりたちは、ある企みをしていた。
それは、子どもたちを乗せて夜の空を飛ぼうというもの。例年は病気で入院している子どもだけを乗せて空を泳いでいたが、今年は希望ヶ丘に住む子どもたち全員を乗せてあげようとしていた。
「今年は、特別だ。希望ヶ丘の子どもたち全員に、夢としか思えないようなひとときを味わわせてやりたい」
決行の日。こいのぼりたちは、希望ヶ丘に住むすべての子どもたちを乗せて夜空を泳いだ。満天の星空を、何十匹ものこいのぼりが子どもたちを背に乗せて泳いだ。
入学したばかりでまだ一度も教室で友だちと会っていない1年生、外で遊べない欲求不満がたまってプロレスごっこを始める6年生。町中の子どもたちがこいのぼりの背に乗って空を飛び交い、歓声をあげて笑いあう。
そこには、去年も顔を見た入院中の少年もいた。命が失われていないことをよろこぶべきか、それとも退院できていないことを悲しむべきなのか。複雑な思いを抱えながら、こいのぼりたちは夜空を泳ぎ続けた。
さみしさは消えないけれど、希望はある。そう思わせてくれる、切なくも美しい物語だ。
重松さんは、
「現実にはありえない話だけど、とコメントを寄せている。
2021年を生きる10代の自分に届けたくて、
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今の時代を生きる読者に響く物語が詰まった「さみしさと希望」の作品集。あなたもきっと、心をつかまれるはず。
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