定年後の一番大きな心配はずばり「お金」である。『「サラリーマン女子」、定年後に備える。』は、働く女性の役に立つおすすめの一冊。
結婚を機に退職、というのは昔の話。女性の社会進出が広がってきている現在、働き続けて定年を迎える女性も増えている。旅行などで老後を楽しむためにもお金は大切。夫婦で2000万円の預金が必要、という情報も少し前に話題となったが、実際にどのくらい必要になるのかはそれぞれの事情にもよる。
老後なんて先の話、と考えている人は、若いうちから取り組んでいる人と比較すると損をする可能性も高い。資産形成は若いうちからコツコツと。でもどのように取り組めば良いかわからない。そんな人のために様々な実践的な内容が記載されている本書から、いくつかのポイントを紹介する。
定年後を楽しく過ごすには、自分が幸せと感じることを見つけているかどうかが肝だと著者である大江さんは言う。会社員として働くうちにいつの間にか、自分のやりたかったこと、幸せを感じられることがわからなくなってしまうことも。まずは、自分の好きなことに意識を向けられているかチェックする必要がある。
当てはまった数が0個だった場合、やりたいことが後回しになっている可能性が。まずは好きなことを考えてノートに書き出してみるとよさそう。当てはまった数が1~2個だった場合、ぼんやりやりたいことのイメージではきているようだ。気になることの情報を集めてみるとよいとのこと。最後に3つ以上当てはまった場合は、やってみたいことが明確にあるタイプ。具体的な準備に取り掛かることを勧めている。
巷ではよく、老後は2000万円必要と言われるがそれは本当だろうか。よくよく考えてみると、今かかっている生活費が人それぞれ違うように、老後の資金も人それぞれ違うことがわかる。そこで、老後の収支を見える化しておくことが必須である。お金の全体像を見ると、意外と準備しておく額が少なくて済むこともあるようだ。
支出については、シニア世代の日常生活費は現役時代の70%が目安とのこと。日本人女性の65歳の平均余命は24.63年。そのため90歳までの25年を掛け合わせて老後の日常生活にかかる総額を計算しておく。そこに医療費や介護費、やりたいことの予算も足し合わせて考えると老後の暮らしに必要なお金がわかるとのこと。
また今ある資産と負債を把握すること、もらえる公的年金や退職金などの収入をチェックすることも大切。公的年金は日本年金機構の「ねんきんネット」を使って、もらえる額をシミュレーションすることが可能だ。
老後の資産形成の基本は、毎月コツコツと貯めること。もちろん急に必要になる支出のために貯蓄をするのも大切だが、きちんと貯めてしっかり増やすためには、「つみたてNISA」や個人型確定拠出年金、すなわちiDeCoといった投資を若いうちから始めておくことが大切となる。
資産形成の際、自分がコントロール可能なものと、コントロールできないものを間違えないように、とのアドバイスがある。収益はコントロールできないが、資産形成の配分方法はコントロール可能。さらには投資におけるコストもコントロール可能なので、意識をする必要がある。コストとは、税金や手数料のこと。どのような資産形成方法だと税金が安くなるのか。そのための条件は何か。用意されている制度によってそれぞれ異なる。
例えばiDeCoは原則として60歳以降にならないと受け取ることができない。しかし、所得控除や運用益が非課税になるなど、コスト面でのお得は大きい。自由に引き出せないのはデメリットのようにも思えるが、逆に老後資金をついつい使わないような仕組みとも言える。
本書には積み立ての申し込みから管理に至るまで、様々な項目が書かれている。しっかりと調べて「コスト」を意識したお得な資産形成を目指したいところである。
定年後も働くことは、収入源となるだけでなく、世の中に必要とされている実感も与えてくれる。再雇用や転職、起業やフリーランスなど働き方は様々であるが、どんな環境にも適応できるようにレジリエンスを高めておくことが必要だと言う。レジリエンスとは、変化を前向きに捉えられる心の柔軟性のこと。レジリエンスを高めるためには、以下の3つの習慣を身に付けておくとよいだろう。
・あれこれ考えず、まず動く
・「自分で自分を褒める」習慣を
・やりたいことや好きなことを周りに発信
シニアライフを満喫している方の中には、60歳で大学に入った人や定年後に地方に移住をした人もいる。先輩たちのおかげで定年後の未来にも明るいイメージを持てそうだ。
お金の問題はいつもつきまとうが、備えておくことで定年後も色んなことにチャレンジすることができる。先のことと思わずに、若いうちに取り組みたい。また本書はおひとり様、パートナーのいる人、さらには男性にも参考になる一冊である。一度手に取って、自分の定年後の生活について考えてみてはいかがだろうか。
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